研究実績の概要 |
本研究の目的は,(1)学校組織における分散型リーダーシップの有効性・リスク・プロセスについて先行研究を整理・統合し実践的課題を明確化すること,(2)尺度作成により将来的な研究の基盤を構築すること,(3)分散型リーダーシップの有効性および,管理職教員によるリーダーシップの相互関係について実証的に検証することである。 本年度は,2018年度に実施した600名の小・中学校の現役教員を対象としたインターネットリサーチおよび,362名の現職教員を対象としたアンケート調査を分析し,日本教育心理学会,日本グループダイナミックス学会でその成果を発表した。さらに,174名の現職教員を対象としたアンケート調査および,950名の小学校,中学校,高校の現任教員を対象としたインターネットリサーチを新たに実施した。 本年度の目的は,(1)2018年度に実施した調査データをもとに,心理尺度の開発および,その信頼性や妥当性を確認するための分析を実施した。その結果,19項目で構成される,1次元の分散型リーダーシップ測定尺度(Distributed Leadership Inventory, DLI)を開発した。尺度の妥当性・信頼性については,学校種を越えた複数サンプルにおける信頼性分析および確認的因子分析,理論的視座から関連が認められる変数(組織風土,専門的学習コミュニティ,PMリーダーシップ,コミットメントなど)との基準関連妥当性の確認により検証した。第二の目的として,(2)分散型リーダーシップの有効性を下支えする垂直型リーダーシップの有効性に関する調査を行った。その結果,分散型リーダーシップは,全般的な感情的ストレス反応を軽減すること,教員の「思い切ってやってみる」という自律的な教育実践に対して,校長によるエンパワーメントを調整する可能性が示された。
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