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2017 年度 実施状況報告書

塩素エネルギー変換を指向した新たな燃料電池システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K18315
研究機関旭川工業高等専門学校

研究代表者

小寺 史浩  旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (20634421)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード環境資源 / 塩素化合物 / エネルギー変換 / 電極触媒 / ナノカーボン
研究実績の概要

本研究では,世界的に高まりを見せる環境資源の活用について,地球上にほぼ無尽蔵に存在する塩素およびその化合物に着目し,固体高分子形燃料電池を応用したカーボンフリーの新たな発電システムの開発を目的としている.具体的には,多くの塩素化合物の中から塩素のオキソ酸を選択し,エネルギー変換メカニズム,オキソ酸の供給形態,電極触媒の観点から研究を進めている.本年度においては,エネルギー変換メカニズムについて,固-気相界面における電極反応をモデル化し,微小電極法,ハイドロダイナミック法,電気化学水晶振動子計測装置を用いて,メカニズムの解明に取り組んだ.その結果,各液性における反応メカニズムの新たな知見および反応系への光照射による優れた効果を見出すに至った.また,オキソ酸の供給形態について,コスト,安全性,環境負荷,持続可能性の観点から水酸化物への吸着(吸収)・脱離(発生)を着想し,その有用性について検討を進めた.その結果,安定性,吸脱着能,特に脱離温度および脱離形態において優れた点を見出すに至った.さらに,電極触媒について,貴金属である白金,パラジウム,ロジウム,金に加えて,カーボンナノチューブ,フラーレン,カーボンアロイなどのナノカーボン材料の電極触媒活性の評価を行った.その結果,ナノカーボン材料において優れた電極活性を見出すに至った.以上のことから,初年度の計画であった新たな発電システムの開発に関する有用かつ重要な知見を得ることができ,次年度以降の研究につながるものと期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記目的のためエネルギー変換機構,オキソ酸の供給形態,電極触媒の観点から研究を進めた.エネルギー変換機構については,固-気相界面をモデル化し,オキソ酸の存在形態における機構を微小電極法,ハイドロダイナミック法,電気化学水晶振動子を用いて評価し,各液性における詳細な機構が明らかとなりつつある.特に,光照射による反応の制御法を見出したことは今後の展開において非常に有用な発見であった.また,供給形態については,コスト,安全性,環境負荷低減の観点からCa(OH)2による吸着脱離を着想するにいたり,特に低温脱離において優れた点を持つことを見出した.さらに,電極触媒については,貴金属である白金,パラジウム,ロジウム、金に加えて,カーボンナノチューブ,フラーレン,カーボンアロイなどのナノカーボン材料に着目し,より高い活性を示す電極材を見出した.以上のことから,当初の計画による成果に加えて,副次的な成果も得られており,目的は達成されているといえる.なお,これらの研究成果は,学会等で発表されており,関連分野の進展および領域の拡大に貢献したものと考えられる.

今後の研究の推進方策

本年度に得られた成果を踏まえ,まずは一般的な固体高分子形燃料電池を用いて,水素と組み合わせることにより,その出力特性を評価する.液性および光照射により形態および反応電位の制御が可能であることから,反応系における最適解を求める.そのためには,電極触媒の性能が重要であることから,本年度の知見を基に新たな電極材料の創製を目指す.また,固体高分子形電解により水素およびオキソ酸を発生させ,充放電におけるエネルギー収支の比較を行う.これらと並行して,デジタルシミュレーションによる評価にも取り組む.以上の成果を基に水ガラスでコーティングした高耐食性のセルによる実用モデルの構築を目指す計画である.

次年度使用額が生じた理由

反応機構の解明において非常に重要な役割を担う電気化学水晶振動子計測装置の一部を譲り受けたことから,その部分を購入する必要がなくなり,本年度の支出額は,当初計上していた金額より少なくなった.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Detection of Chlorine in a Non-Aqueous Solution via Anodic Oxidation and a Photochemical Reaction2018

    • 著者名/発表者名
      Shogo Nakagawa, Hajime Nishimura, Fumihiro Kodera
    • 雑誌名

      Analytical Sciences

      巻: 34 ページ: 1-4

    • DOI

      10.2116/analsci.34.1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 酸素発生型光合成にみる塩素資源の可能性2018

    • 著者名/発表者名
      小寺史浩
    • 雑誌名

      アグリバイオ

      巻: 2 ページ: 42-43

  • [学会発表] カーボンオニオン構造を有する金属-炭素粉粒体による酸素還元反応2018

    • 著者名/発表者名
      小寺 史浩、吉田 生未、長谷川舞、石丸裕也、梅田 実、宮越 昭彦
    • 学会等名
      電気化学会第85回大会
  • [学会発表] マイクロ波を利用するメタン直接分解反応(10)-炭素循環利用システムの構築と課題-2018

    • 著者名/発表者名
      長谷川舞, 石丸裕也, 近藤諒, 吉田生未, 佐々木慈生, 小寺史浩, 宮越昭彦
    • 学会等名
      化学系学協会北海道支部2018年冬季研究発表会
  • [学会発表] 金属内包多層フラーレン電極の酸素還元反応における性能評価2018

    • 著者名/発表者名
      吉田生未, 佐々木慈生, 長谷川舞, 上村涼輔, 石丸裕也, 宮越昭彦, 小寺史浩
    • 学会等名
      化学系学協会北海道支部2018年冬季研究発表会
  • [学会発表] マイクロ波メタン分解により生じる機能性炭素粉粒体のモルフォロジー解析および電気化学的応用2018

    • 著者名/発表者名
      佐々木慈生, 吉田生未, 長谷川舞, 石丸裕也, 宮越昭彦, 小寺史浩
    • 学会等名
      化学系学協会北海道支部2018年冬季研究発表会
  • [学会発表] Development of Innovative Process for Multi-dimensional Utilization of Methane with Microwave Heating2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroya Ishimaru, Mai Hasegawa, Narumi Yoshida, Minoru Umeda, Mitsuhiro Inoue, Hiroya Ishikawa, Ryo Saito, Shogo Nakagawa, Fumihiro Kodera, Akihiko Miyakoshi
    • 学会等名
      The 8th Japan-China Workshop on Environmental Catalysis
    • 国際学会
  • [学会発表] マイクロ波加熱メタン分解反応による炭素の精製と応用2017

    • 著者名/発表者名
      長谷川 舞, 石丸裕也, 吉田生未, 小寺史浩, 宮越昭彦
    • 学会等名
      第47回石油・石油化学討論会
  • [学会発表] 金属内包多層フラーレンによる酸素還元の電極活性評価2017

    • 著者名/発表者名
      吉田生未, 山田千波, 長谷川舞, 石丸裕也, 石川浩也, 宮越昭彦, 梅田実, 小寺史浩
    • 学会等名
      2017年電気化学秋季大会
  • [学会発表] モルフォロジー解析による金属内包高次フラーレンの 電極性能評価2017

    • 著者名/発表者名
      佐々木慈生, 吉田生未, 山田千波, 長谷川舞, 石丸裕也, 宮越昭彦, 小寺史浩
    • 学会等名
      日本化学会北海道支部2017年夏季研究発表会
  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/kodera

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公開日: 2021-01-27  

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