研究課題/領域番号 |
17K18323
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
横山 直幸 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 准教授 (90710591)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血液学 / 光計測 / 人工臓器工学 / 計測 / フィブリン / 複屈折 / 血栓 / 人間医工学 |
研究実績の概要 |
研究初年度である平成29年度は、光学系の設計と血漿中フィブリンの可視化に向けた予備実験を中心に研究活動を行った。 光学ベンチの直線軸上に、キセノンフラッシュランプ(L9455-11,浜松ホトニクス)、円偏光子(WGH-30G,渋谷光学)2枚、フォトダイオード(C10439-08,浜松ホトニクス)を順番に設置し、2枚の円偏光子の中間にガラスキュベットを置くことで、実験試料に対して円偏光が入光し、試料の複屈折により位相がずれた円偏光が偏光子により直線偏光へ戻り、位相がシフトした分の減衰した光量がフォトダイオードにより電圧値として定量される光学系を構築した。 試作した光学系により「異方性物質の複屈折位相差定量」の可能性を評価するために、2種類の異方性物質を用いた妥当性評価実験を行った。予備実験は、protein A(和光純薬工業)とセルロース(ナカライテスク)を純水に懸濁することで生じる複屈折位相差を、フォトダイオードの受光強度変化により定量するものとした。ガラスキュベットに3mLの純水を入れ、5分毎に純水で希釈したprotein Aとセルロースを0.05mLずつ注入したところ、フォトダイオードの透過光強度変化が観測された。しかし、光源の温度ドリフトや回折特性により再現性のあるデータ取得ができなかった。 予備実験の結果から、光源をレーザーモジュールへ変更することで再現性の高い計測が行える可能性が示唆された。また、実験系における温度制御の重要性について確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の目標である光路の設計、素子の選定、複屈折計測の実験的評価までは完了しているものの、流動状態の血漿試料に対する計測に至っていない。また、フォトダイオードを用いて定量した電圧降下が「何によるものなのか?」について明らかとするプロトコルの策定に着手できていない。 ただし、フィブリンの凝集や立体構造の形成に伴う複屈折位相差変化や、複屈折を電圧値により定量する方法論については、一定の妥当性が評価された。
研究遅延の大きな原因は、光源であるハロゲンフラッシュランプの制御に難渋したことが大きい。電源ユニットから光源、ファイバまで一式となっているレーザーシステムを購入すれば問題は最小限にとどめられたと考えられるが、補助担当の学生に対する教育的効果と予算の都合の2点により、ライトモジュールを使う事にした。これにより、実験の再現性に関する原因特定に多くの時間を要する結果となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目はレーザーモジュール、冷却機構、1/4波長板、赤色干渉フィルタを追加購入し、光学系の修正を最優先で行う。初年度に確定したプロトコルに従って、複屈折位相差計測システムの妥当性評価を行って再現性を確かめた後、血液を用いた本実験へと移行する予定である。なお、本実験のプロトコルは以下の通りである。①クエン酸ナトリウムにより抗凝固処理を施した豚新鮮血液を15,000rpmで遠心分離し、血漿を抽出 ②血漿3mLをガラスキュベットに静置し、5分毎に塩化カルシウムを滴下することで凝固を促進 ③ガラスキュベットに円偏光を照射し、透過光を1/4波長板と赤色干渉フィルタを通してフォトダイオードにて検出 ④フォトダイオード出力の経時的変化を記録 本実験は小職研究室所属の専攻科1年生が中心となって行い、9月を目途に実験を完了させる。その後、ガラスキュベットに対して垂直な2方向からの光軸を設定し、2次元的なフィブリン凝集のイメージングが可能であるか、実験的な検討に移る。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度で設計・試作を予定していた血液試料の流路および観測部の設計に取り掛かることが出来ず、部品等の購入に至らなかった。これは、まず時間変化しない円偏光を作り出し、実験試料に対して垂直に照射、その後、透過した円偏光の内、位相ずれした分だけ検出器にて電圧値として定量する、という光学系が完成した後の作業となる。 2年目は、光学系を完全なものとして、再現性が確認できた後に、血液試料がサンプルポイントに流入するシステムの設計と試作を行う。
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