研究課題/領域番号 |
17K18323
|
研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
横山 直幸 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 准教授 (90710591)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 血液凝固 / 複屈折 / フィブリン / 人工心肺 |
研究実績の概要 |
人工心肺による対外循環や、透析機器による血液浄化においては、体外へ導出された血液が異物反応や機械的せん断により凝固してしまう。体外循環は、赤血球に対する酸素付加と、血液に対する流体エネルギ(流量・圧力)の印可を主目的としているが、血液凝固により生成された血栓が人工肺酸素加膜を閉塞することで酸素加効率が低下し、フィルタ目詰まりにより流路抵抗が増大して返血の流体エネルギが低下してしまう。人工透析においても、血液凝固は透析膜を閉塞させ、透析効率を著しく低下させてしまう。そこで、体外循環や人工透析においては薬剤による抗凝固を行うが、過剰な抗凝固は術中・術後の出血コントロールを難渋させる。特に、開心術を伴う心臓血管手術においては必要最小限の抗凝固であることが求められており、薬剤の投与速度やタイミングに関しては、人工心肺回路や術野における血栓の確認を契機としていることが多い。しかし、血栓が確認された時点での抗凝固薬投与と持続注入増加(開始)では、血栓の形成抑止タイミングとしては遅く、過剰投与の可能性が高い。 そこで本研究では、血栓の前駆物質であるフィブリンに着目し、フィブリンの凝集および立体構造形成のタイミングを複屈折位相差として検出する方法の提案と、その検出システムの妥当性評価を目的としている。具体的には、異方性物質であるフィブリンに対して円偏向を照射することで複屈折が起こり、受光器感度の変化によりフィブリンの凝集を検出するシステムを構築し、実験的にフィブリン検出の可能性を検討している。 今年度までに、複屈折サンプルにより電圧値が上昇する光学系の試作が完了しており、可視光では検出できない血漿サンプル中のフィブリンによる複屈折が検出されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目に当たる平成30年度は、流路中におけるフィブリン凝集と血栓形成を、光学顕微鏡と複屈折検出システムの双方で観察し、血栓形成に至る過程における2つの計測系の結果を比較する予定であった。このうち、流路中に設けた観察野においてフィブリン凝集を引き起こすことは難しく、現状ではガラスキュベット中の抗凝固処理(クエン酸添加)血漿に対して塩化カルシウムを添加することで凝固を促進する計測システムとしている。 また、フィブリン凝集と考えられる現象により生じる複屈折位相差を定量的にとらえるため、雲母フィルムを用いた計測をリファレンスとして行っており、当初予定していた研究内容に追加で行う実験が生じてしまった。 以上の結果、予定していた研究計画は遅延しているが、より定量的かつ詳細な考察が可能な計測システムに近づいていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は3年計画の最終年度であるため、本研究の最終目標である「血漿サンプル中のフィブリン凝集を早期かつ高精度に検出可能なシステム」を完成させる必要がある。このシステムにおいては、可視光照射ー吸光度計測のシステムと円偏向―複屈折位相差検出のシステムを直行する形で配置し、可視光計測よりも早く複屈折位相差が検出されるシステムを目指す。また、光電子増倍管を経て検出される電圧値の変化が、どの程度の複屈折位相差を意味するのかも、定量的に換算できる必要がある。 以上のタスクを申請者、指導学生に割り振って、効率的に研究を遂行する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2年目までに実験系が完成し、学会にて報告および情報収集を行う予定であったが、追加の実験系の設計・試作が必要になったため、とくに旅費の点で次年度使用額が生じてしまった。現状で一定の成果が出ているため、国内外の学会にてここまでの成果報告を行う予定である。
|