研究協力機関の閉鎖と昨年度のコロナ禍の影響を大きく受けた中ではあったが、感染症対策を行いながら、一昨年度と同様の課題で、追加実験を遂行した。 脳血管障害を患う患者さんを対象とした検証困難な状況が続いたため、最終年度も健常者を研究対象者とし、片側手指によるダイナミックな把持運動課題を5分間30%MVC負荷で実施前後に、パルスアナライザープラスビュー(TAS9VIEW、YKC社)により、自律神経系バランスの変化を検証した。また、負荷無しの運動条件においても同様に検証した。運動開始前のTAS9VIEWによる測定は、非運動手指から2分30秒間静寂な環境で座位による安静時に閉眼で行った。運動後の同測定は、2分間の座位による休息後、同測定を実施した。分析には、測定信頼度95%以上のデータのみを採用した。その結果、30%MVC負荷で把持運動を行った場合、運動前に比べてTotal Power(TP)値が有意に低下していた。TP値は自律神経系の全体的な活性度を評価していることから、TP値の低下傾向は筋疲労が影響しているものと考えられる。一方、負荷無しで同課題を行った場合は、TP値の有意な低下は認められなかった。今後、交感神経および副交感神経の詳細な分析も行い、これまでの臨床実験で得られてきた経頭蓋磁気刺激による中枢神経系興奮性評価を行ったデータの関連性を探る。当該研究課題の期間は終了したが、今後も患者さんを対象とした中枢神経系興奮性評価および自律神経バランス評価の検証機会を得られるよう努めたい。
|