本研究は,移住者の定住意向に対しての移住者と地域住民双方の関係性という観点に着目しており,その心理的メカニズムを計量的に解明したものである。最終年度では、移住者と地域住民によってネストされた構造の調査データをもとに、マルチレベル分析を行った。 分析結果をまとめると、まずwithin level に該当する地域住民レベルにおいては,他者に対して寛容である地域住民のほうが,地域住民自らのパーソナルネットワークがより広いという因果構造を維持していることが明らかになった。 さらに、between level に該当する移住者レベルにおいては、第一に,移住者は受けているソーシャル・サポートの種類のなかでも,周りから道具的サポートを受けることが多いほど,移住者の定住意向が高まることがみられているものの、評価的サポートと定住意向の間には負の関係であることが確認された。第二に,移住・定住に関連する自治体主催の交流会等の様々な取組が、移住者の定住意向を高めていることがみられた。その中でも、特にパーソナルネットワークの広い地域住民と何らかのかかわりを持つことの多い移住者ほど,移住先への定住意向にポジティブに効くことが明らかになった。このことは,移住者が居住している地域において,いかに移住者が地域住民との普段の関係性が重要であること,特に地域であらゆる多様なパーソナルコミュニティーネットワークを持っている地域住民と出会い,その人々とつながることが肝心であることを示唆している。 本研究の結果は,新しい地域への移住・定住に適する人々のファクターを究明したものである。このことは,真の意味での地域の活性化につながるための地方移住・定住方策を講じる上での重要な判断基準の一つになりうると考えている。
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