本研究課題は,人々の間でのコミュニケーションが,どのようなやり方で達成されているかを明らかにするための研究手法で利用される定性的記述(会話の中で 起こる発話の転記や人々の視線や動作を書き起こしたもの)を蓄積・共有可能とするシステムを開発することを目的とする. 2020年度は,19年度までの完成させた書き起こし補助システムの改良及び公開を目指し作業を実施した.引き続き実施した改良点として,18年度までは発話オーバーラップ時のインデント記号の番号を,会話全体で異なるものにしなければいけない仕様であり,アノテーション実施者が,番号を管理する必要がでてしまい,認知負荷が高まるという問題に対処したものであった.2019年度より,会話内の一部ブロック内として切り出す方式を採用した.具体的には,このブロック中で,発話のオーバーラップでインデント調整処理が必要な箇所に個別の番号を割り振ればよい形式とした.2020年度では,この仕様を洗練させ,ブロック内で利用される番号の数は3人会話程度であれば二桁いかない程度に収まり,アノテーション実施者の認知負荷を下げることができた.また,このブロック切り分けを実施したあと,インデント調整を実施するというプログラムに改良することで,プログラム自体のループ回数を減らし,処理スピードを上げられた. また公開作業としては,コロナ感染症の影響もあり,発表・論文化を見送った.代わりに,2021年に実施される日本認知科学会 第38回大会にて発表申込を実施した.この発表にて,作成した予稿原稿をもとに,内容を精緻化することで,国際会議(LREC)で発表を行い,国際会議論文として成果を公開する予定である.
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