研究実績の概要 |
本研究の目的は、軸索誘導分子・ネトリン1による真の交連軸索誘導機構を明らかにすることである。平成29年度までに、後脳交連軸索の腹側伸長に対する、腹側正中線、脳室帯のそれぞれに由来するネトリン1の寄与の解析を行い、脳室帯に起源を持つネトリン1こそが後脳交連軸索の腹側伸長を制御していることを見出し、論文に報告した(Yamauchi et al., Sci Rep, 7:11992)。 平成30年度は、部位特異的にネトリン1を欠損するコンディショナルノックアウトマウス(ネトリン1cKOマウス)の更なる解析を実施した。腹側正中線を交差し対側へと軸索を伸長する交連神経は中脳・後脳・脊髄に存在する。そしてそれぞれの領域において交連軸索は、腹側正中線に到達するまでに領域特異的な伸長経路を取ることが知られており、領域特異的な交連軸索誘導機構が存在する可能性が考えられた。そこで、ネトリン1cKOマウスの中脳・後脳・脊髄における交連軸索伸長の解析に取り組み、そのうちの脊髄における表現型の一部を学会発表において報告した(Yamauchi et al., 第41回日本神経科学大会)。軸索誘導分子タンパクが生体内において、どのように分布し、どのようにして神経軸索の伸長経路選択に影響を与えているのかは不明な部分が多い。そこで、共同研究により開発したネトリン1タンパクに対する特異的抗体を用いて、ネトリン1cKOマウスにおけるネトリン1タンパクの発現分布解析と軸索伸長異常の関係性の解析を行なった。
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