研究課題/領域番号 |
17K18333
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
河崎 敏広 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (30770630)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 減数分裂 / 精子形成 / 減数分裂開始機構 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、最初期の精原細胞であっても減数分裂を開始する異常を持つゼブラフィッシュENU 誘導変異体PM-035の原因遺伝子の同定と機能解析により、脊椎動物における減数分裂開始機構解明の新たな糸口を見出すことにある。まず、PM-035変異体の原因遺伝子の同定に着手した。ヘテロ変異体の掛け合わせによって得られた表現型を持つ個体群と持たない個体群のゲノムを抽出し、各染色体に存在するマイクロサテライトマーカーを用いてゲノミックPCRを行い、変異座と連鎖するマーカーの検索を行った。この解析により、PM-035変異体の15番染色体の上部に変異座が存在することが分かった。候補となる原因遺伝子を通常のシーケンサーで見つけ出せるほどには、変異座が存在する領域を狭めきれなかったため、次世代シーケンサーを用いた解析を行うことにした。 PM-035の表現型を持つ25個体(ホモ変異体)と持たない25個体(野生型/ヘテロ変異体)のゲノムをプールし、次世代シーケンサーを用いて全ゲノムSNP解析を行った。当初は解析ツールが整っているゼブラフィッシュゲノム情報(Zv9)を用いたが、ホモ変異体特異的な終始変異を見出す事が出来なかった。しかし、平成30年3月に公開された最新のゲノム情報(GRCz11)を用いる事により、候補領域中の3遺伝子にホモ変異体特異的な終止変異が存在する事が明らかになった。これら3遺伝子が強力な原因遺伝子の候補と考えられるため、それぞれの変異体をCRISPR/Cas9を用いて作成し、PM-035変異体との相補性解析を行って原因遺伝子であるか確認する予定である。原因遺伝子がわかり次第、相互作用する因子の解析等を行い、減数分裂開始機構解明の足がかりとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、3つの候補遺伝子についてCRISPR/Cas9を用いて変異体を作成している。当初の予定では既にホモ変異体を得ている予定であったが、CRISPR/Cas9を顕微注入した世代(F0)で不妊となる個体が頻出し、ヘテロ変異体(F1)を得るのに遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
現在、3つの候補遺伝子について変異体を作成しており、近日中にそれぞれのホモ変異体およびヘテロ変異体を得る見込みである。その後、原因遺伝子を確定するためにPM-035変異体との相補性解析を行うが、ホモ変異体の精巣の表現型解析によって原因遺伝子の大よその判断は可能と見込まれる。この時点で原因遺伝子産物に対する抗体を準備し、研究期間内に発現解析および免疫沈降による相互作用因子の解析を行い、減数分裂開始機構の一端を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
PM-035変異体の原因遺伝子の同定が事前の想定より大きく遅れたため、当該年度に予定していた海外の学会参加を取りやめ、国内学会も札幌での地震のために中止となったため、旅費を使用しなかった。また同じ理由で、「その他」で予定していた原因遺伝子の機能解析のための外注解析を行えなかったため、使用していない。これらの予算を次年度に行うPM-035変異体の原因遺伝子の機能解析に使用する。
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