がん研有明病院にて生検、手術を行い、メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患、または、その他の医原性免疫不全関連リンパ増殖性疾患と診断された患者41例のうち、検体が使用可能であった30例において、エクソームシーケンスを行った。また、リンパ腫組織型がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL) である検体を中心に、17例のRNAシーケンス、8例の全ゲノムバイサルファイトシーケンスを行った。さらに、共同研究機関である亀田総合病院、順天堂大学医学部附属浦安病院より、それぞれ、30例、8例の提供をいただき、追加で38例のエクソームシーケンスを行った。 これらの68例のエクソームシーケンスの中から、リンパ腫組織型がDLBCLである30例のエクソームシーケンスの結果を、化学療法が必要であった20例とMTXの中止のみで改善した10例で比較を行った。化学療法が必要であった群には、Chapuyらが報告したDLBCLを細分類したclusterに多く変異が認められた遺伝子に変異が認められ、また、関節リウマチになりやすい遺伝子変異も認められた。この結果から、化学療法が必要であった20例の中には、関節リウマチになりやすい遺伝子変異をもち、さらに、clusterに分類される遺伝子変異を多くもつ症例が集積していることがわかった。関節リウマチ患者は一般と比較し、リンパ腫になりやすいとされており、これを裏付ける一群がみられることが示唆された。 本研究によりMTX-LPDと診断される患者の中に、関節リウマチとしての遺伝背景を基礎としたclusterに集積されるDLBCLが認められることが示唆された。今後は本研究を発展させ、構造変異やコピー数解析、RNAシーケンス、全ゲノムバイサルファイトシーケンスの結果を複合し、残された症例の特徴の解明を目指す。
|