子宮および卵巣に生じる癌肉腫は、予後不良の希少がんである。申請者らは、癌肉腫にゲノム異常パターンによる4分子型があり、中でもDNAコピー数異常が頻発し、相同組換え修復異常(HRD)を背景に生じる Copy Number High (CNH)サブタイプの予後が最も悪いことを見出した。本研究では、予後不良なCNHサブタイプの中で原因遺伝子が不明となっている症例について全ゲノムシーケンス解析し、その責任遺伝子・領域を同定することを目的とする。HRDはPARP阻害薬の標的になり得ること、また分子型分類により、がんの個性に応じた治療が可能になることから、予後の改善ならびにプレシジョン医療への展開が期待される。 本研究は以下のように進める。(1) CNHサブタイプの中で原因遺伝子が不明である20症例の全ゲノムシーケンス解析を行う。(2) 体細胞および生殖細胞系列変異の解析を行い、責任遺伝子・領域の候補を探索する。(3) これまでの癌肉腫の解析結果、ならびにインハウスおよび公開データベース上の類縁がん種のデータと統合的に解析し、責任遺伝子・領域を同定・実証する。(4) アーカイブ検体152症例をターゲットリシーケンス解析し、特定した変異の再現性を確認する。 平成30年度は、体細胞および生殖細胞系列変異解析データの精査を行い、全ゲノムシーケンス解析に着手した。また、発現データおよびT細胞受容体(TCR)レパトア解析データを用いて、免疫微小環境との関係について解析した。CNHサブタイプにおいて、プラズマ細胞、CD8陽性T細胞、メモリCD4陽性T細胞、および、マクロファージに関するシグネチャーの値が低下していた。TCRの多様性においてもCNHサブタイプで低下しており、予後との関係性が示唆された。
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