研究課題/領域番号 |
17K18339
|
研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
山崎 章徳 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 博士研究員 (80623884)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | オートファゴソーム / 選択的オートファジー |
研究実績の概要 |
オートファゴソーム形成過程では、隔離膜と呼ばれる御椀型の形成中間体上のホスファチジルエタノールアミンにAtg8が共有結合する (Atg8-PE)。選択的オートファジーにおいてカーゴを認識したカーゴ受容体はAtg8-PEに結合することでオートファゴソームに取り込まれる。Atg8-PEは隔離膜の凹面凸面の両面に局在するにも関わらず、カーゴ受容体は凹面に効率よく局在化すると考えられている。本研究では選択的オートファジー経路のモデルとして出芽酵母Cvt経路を用い、カーゴ受容体Atg19とカーゴApe1およびAms1が隔離膜凹面に局在化するメカニズムの解明を目的としている。 本年度は隔離膜のモデル系として単一巨大リポソーム (GUV) を用いたin vitroでの隔離膜局在の可視化を試みた。一般的に用いられるGUVはエレクトロポレーションによって調製されることが多い。この場合コレステロールが必須であり、コレステロールを含むGUVはrigidで球形から形を変化させない。我々の研究室で用いられるGUV作製法ではコレステロールを用いないため、凹凸面を持つGUVが調製できる。この手法を用いて作られたGUV上のPEにAtg8を共有結合させ、凹凸面を持つAtg8-PE含有GUVの形成に成功した。Atg19を加えると、Atg8結合能依存的にGUV表面に局在し、さらに野生型のAtg19はGUVの凹面に特異的に局在した。Atg19の変異体を用いた解析により、GUV凹面への局在にはAtg19のコイルドコイル領域とAtg8結合領域を持つことが必要十分であることが明らかとなった。Atg19はコイルドコイル領域を介して多量体を形成することが示唆されている。そのためAtg19がどのように多量体を形成するかをコイルドコイル領域のX線結晶構造解析を行うことにより調べ、結晶中で多量体を形成していることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の計画では、in vivoでの免疫電子顕微鏡や生化学的解析による隔離膜凹面へのカーゴ集積の検出、in vitroではAtg8-PEナノディスクを用いた生化学的解析を中心に予定していたが、これらは未達成である。しかしながら、in vitroでのAtg8-PE GUVを用いた解析でAtg19のGUV凹面への選択的集積が観察されたこと、Atg19コイルドコイルのX線結晶構造解析が成功し多量体形成機構が判明したことを考えると、目的達成度としては当初の予定通りではないかと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降の推進方策としては、Atg8-PE GUVを用いた実験を中心に、特に実際のカーゴも凹面に局在するかを検討する。更にAtg19が実際に溶液中でも結晶中と同様の多量体を形成しているかどうかをSEC-MALSなどを用いて検討する。カーゴ受容体の多量体形成が凹面局在性に必須かどうかを調べるために、多量体化ドメインとAIMを持つ人工的な蛋白質を設計し、この蛋白質でもAtg19と同様の局在を示すかどうかを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は主に所属研究室で備えられている備品および消耗品で研究し徹底的な節約を行ったため次年度使用額が生じた。本年度以降に積極的な論文出版および海外での研究報告を計画していること、適切な消耗品購入あるいは備品導入を行うことにより次年度使用額を利用する予定である。
|