研究課題/領域番号 |
17K18343
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
横尾 英史 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 研究員 (80583327)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会的比較 / 社会的選好 / ランダム化フィールド実験 / 環境配慮行動 / 発展途上国 / ごみ分別行動 / 不平等回避選好 |
研究実績の概要 |
平成29年度はベトナム・ハノイ市で行ったランダム化フィールド実験のデータを分析した。この実験では周囲の家計の行動の平均についての情報がインフォーマル・セクターへの資源ごみ供給行動を増加させるかを検証した。このような他者の行動の情報提供は社会的比較(social comparison)と呼ばれる(Frey and Meier, 2004)。この情報提供がごみ分別という環境公共財の私的供給行動を促すかを検証した。 データ分析の結果、社会的比較の効果が不平等回避選好という社会的選好の有無によって対称的となることが明らかとなった。すなわち、不平等回避的な人が社会的比較のメッセージを受け取るとより環境に配慮した利他的行動をとるようになる。 この結果をもとに論文を作成し、アメリカ環境・資源経済学会2017年大会、マンチェスター大学のワークショップ(Manchester Environmental Economics Workshop, 2017 International workshop on “Social preferences and environmental and resource economics”)で口頭発表した。 さらに、上述のランダム化実験による実証研究結果を応用ミクロ経済学理論として説明することを試みた。Fehr and Schmidt (1999)の不平等回避選好の理論モデルを拡張し、公共財を導入し、私的財と公共財の間の限界代替率が可変となることを許容するモデルを開発した。このモデルを応用することで、社会的選好を持つ個人の環境配慮行動や公共財の私的供給行動を説明することが可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証研究と理論研究の双方が順調に進捗した。また、実証研究の論文作成も順調に進捗し、海外の学会・ワークショップでの口頭発表を行った。以上より、予定通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ランダム化フィールド実験による社会的比較の実証研究論文の修正を行い、国際的な学術誌へ投稿する。また、公共財の私的供給、社会的比較と社会的選好(特に、不平等回避選好)に関する理論研究を進め、ベースとなるモデルについて論文化し、国際的な学術誌へ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
順調に論文を作成したものの、英文校正を委託して雑誌へ投稿するというプロセスまで進むことができなかった。結果として、英文校正費用などの繰り越しが生じた。当初の目的で次年度に使用する計画である。
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