研究課題/領域番号 |
17K18345
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
森野 悠 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (50462495)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機エアロゾル / 反応メカニズム |
研究実績の概要 |
昨年度は、主に気相反応に関わる数値モデルの構築・シミュレーションを進めた。本年度は、実験データを基に気相反応に関わるモデル検証を実施するとともに、粒子生成・分解モジュールの妥当性を評価した。 第一に、Master chemical mechanism (MCM)で計算されるOH反応性をグルーピングメカニズム(SAPRC07)と相互検証することで、半揮発性ガス(SVOC)の網羅性などを評価した。その結果、MCMとグルーピングメカニズムはいずれも実測されたOH反応性を再現すること、いずれのメカニズムにおいてもアルデヒドやその他カルボニル化合物が主要な寄与であること、低NOx条件では過酸化物も重要な寄与を持つものの、有機硝酸の寄与は限定的であることなどが明らかとなった。SVOC成分の壁沈着速度の計算に大きな不確実性があるものの、現在の詳細反応メカニズムは、OH反応性の観点でSVOCを概ね網羅していることが示唆された。 第二に、人為起源二次有機エアロゾル(SOA)と生物起源SOAの蒸発速度などを基に、相対湿度別のダイマー生成・分解速度を推計した。その結果、ダイマーの生成・分解速度はそれぞれ十分前後、及び数時間から数十時間と推計されるとともに、SOA蒸発速度の相対湿度依存性は粒子内拡散を考慮することで説明可能となった。本計算より、SOAモデルにおいてダイマー生成・分解を考慮することによって、SOAの蒸発速度と組成分布をともに再現することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、詳細な化学反応を計算する気相反応モジュール(MCM)とグルーピングメカニズム(SAPRC07)で計算されるOH反応性を検証することで、いずれのメカニズムもSVOCを概ね網羅していることを示すとともに、主要なSVOCを明らかとした。 第二に、SOA中で重要な寄与を持つダイマーの生成・分解速度を室内実験データから推計した。これにより、SOAモデル中でダイマーの生成分解過程を明示的にモデル化することが可能となった。 このように、研究は二年度目の計画通りに概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに気相反応と重合化反応のモデル化と検証に取り組んできた。本年度は、主に液相反応のモデル化とモデル全体の検証に取り組む。 第一に、SOAの生成分解速度の相対湿度依存性を基に、液相反応の寄与評価を行う。特に、液相反応により生成される高次酸化生成物の生成量などを評価する。 第二に、主要なSOA前駆体である芳香族炭化水素とモノテルペンから生成されたSOAの生成収率や有機成分、揮発性分布や蒸発特性の室内実験データを基に、本モデルで計算されるSOAの有機成分濃度や重合体の割合を含む物理化学特性を検証する。 合わせて、大気中のSOAの有機成分濃度や揮発性分布の実測データを基に三次元モデルの計算結果を検証する。これらの検証を経て開発されたモデルをもとに、新規に考慮したSOA生成プロセスが大気中のSOA濃度や発生源寄与推計に与える影響を評価する。
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