本年度は、これまでに構築した半揮発性有機化合物(SVOC)の多段階酸化反応や重合体生成を含む粒子内反応、粒子内拡散を考慮した二次有機エアロゾル(SOA)速度論モデルを用いて、主要なSOA前駆体である芳香族炭化水素とモノテルペンから生成されたSOAの生成・消失速度の実測値を再現するモデルパラメータを推計することで、汎用的なモデルの構築を実施した。ここでは、チャンバー実験で得られたSOAの生成収率や有機成分、揮発性分布や蒸発特性の実測値を用いて、SOAにおける重合体の生成・分解速度や乾燥条件と湿潤条件において粒子内拡散速度を逆推計した。その結果、乾燥条件と湿潤条件のいずれにおいても重合体が50%以上の寄与を持つこと、および乾燥条件では粒子内反応速度を決定する上で粒子内拡散が重要な寄与を持つが、相対湿度40%の場合には粒子内拡散の影響は小さいことを明らかとした。これらの結果は、実大気中でのSOA蒸発速度をモデル化する上で、粒子内拡散の影響は限定的であり、重合体生成を含む低揮発性成分(LVOC)のモデル化が非常に重要となることを示唆する。
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