全固体型リチウムイオン電池の課題である低出力密度の要因のひとつとして、電極-電解質界面での高いイオン伝導抵抗が挙げられる。この抵抗には、界面に形成する空間電荷層が関与していると考えられる。本研究ではこの界面近傍の電位とリチウム量を断面計測する新しい表面分析手法を手法を開発し空間電荷層の知見を得ることを目的とした。 H30年度は、前年度に引き続き、一括焼結して作製したある全固体リチウムイオン電池を不活性雰囲気でイオンミリング(クロスセクションポリッシャー)により断面化し、その断面にてケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)および飛行時間型二次イオン質量分析(ToF-SIMS)計測を行った。これにより、複合正極中の電位分布やリチウム元素分布と、それらの電池動作中の変化に関する知見を得ることを試みた。 ToF-SIMSのチャンバー内で電池の充放電サイクルを行い、各動作の前後で計測を行った。リチウムカウントの変化を解析した結果、正極活物質では電池の動作に対応したLiの増減が見られた。さらに複合電極中の固体電解質では初回充電時にリチウムが減少する様子が見られた。この固体電解質についての結果はKPFM法を用いた電位分布計測の結果と対応した。また、KPFMの試料ステージ上で、断面上の電位分布を計測しながら電池の動作試験を行った。電池動作に対して、内部電位の①電池電圧に対応した変化および②充放電反応によると考えられる変化が可視化された。
|