研究課題/領域番号 |
17K18348
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
国枝 賢 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (50414553)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | R行列理論 / 共鳴反応 / 非共鳴効果 / 核反応断面積 / 同時解析 |
研究実績の概要 |
当該年度においては以下に述べる2つの研究(1),(2)を実施した。(1) R行列理論に基づく共鳴解析システムAMURの改良を実施し、共鳴理論における弾性散乱過程の計算において、入射反応粒子に独立な非共鳴補正効果を新たに導入した。それにより、同じ複合核(中間状態)を経由する全ての反応粒子の断面積測定データを同時に解析できるようになった。また、Be-7の励起状態を経由する種々の共鳴核反応断面積測定データの解析に本手法を適用した結果、共鳴パラメータの振る舞いに対して従来よりも多くの制限を与えることができることが分かった。この成果により、今後はPET用放射性薬剤製造に関わる陽子粒子入射核反応データを、これまで考慮されていなかった中性子やアルファ粒子等の入射断面積測定データを加味して評価することができる。また本成果により、断面積予測結果の信頼性や説明性を向上させることができると考えられる。(2) さらに、測定データが取得された条件に対する理論計算値への補正を効率的に行うことを目的として、共鳴理論および共鳴パラメータから断面積のエネルギー依存性を高速に再構築できる計算プログラムを作成した。また、任意の数値テーブルや関数を用いて理論計算結果への補正が行えるように、オブジェクト指向言語を屈指したインターフェースを構築した。これにより、粒子輸送計算コード等によるシミュレーションで得られた補正係数や解析関数を柔軟に共鳴解析へ組み込むことが可能になると共に、核反応断面積データの評価精度を向上させることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を開始した初期の段階において、共鳴断面積の理論計算手法そのものの改良を行うことにより以後の研究をより効果的に実施できると判断した。これに関わる実務に半年ほどの期間を要した為、実際の断面積の評価解析に着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
解析プログラムの整備がほぼ整った為、実際の共鳴断面積の解析および評価計算に着手する。共鳴パラメータを取得した後は、高エネルギー核反応断面積の理論計算にシフトし、理論計算に必要な核モデルパラメータの整備を開始する。以上により、O-18等に対する陽子入射の核反応データベースを数MeVから200MeVまでのエネルギー領域において整備することを計画している。測定データに対する補正係数の算出に関しては、外部の計算コードに頼らず、できる限り解析プログラム内で実施できるように努力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度に海外における調査旅費を計上していた。しかし先方との日程が調整できなかった為、H30年度以降に改めて計画し、これに関わる旅費として使用することにした。
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