研究実績の概要 |
PET用薬剤となる陽電子放出核種は陽子線等による核反応による生成される。従って、モンテカルロ法等の計算科学に基づいて陽電子放出核種の生成量や陽子線エネルギーの最適値を推定するためには、入射粒子と標的核種の核反応断面積(反応割合)のエネルギー依存性に関するデータが必要である。また、加速器の遮蔽設計においては二次生成粒子やガンマ線のスペクトルおよび角度分布の情報(微分断面積)が必要である。H29年度においては、核反応断面積等の測定データから断面積の最適解を導くための共鳴解析コードAMURの高度化を実施した。 H30年度においては、PET用薬剤の一つであるフッ素18の生成断面積を評価するために、過去の学術論文やIAEAが中心となって整備しているデータベースEXFORから酸素18に対する陽子入射の核反応断面積測定データを収集した。また、これらの測定データを精査するために、IAEA核データセクションの専門家らと測定条件や測定誤差の取り扱い方法に関して議論した。共鳴解析に必要なフッ素19(陽子と酸素18が形成する複合核)の励起構造(励起エネルギー、スピンやパリティの情報)については、米国の核構造データベースENSDFから最新の情報を取得した。さらに、(p,n)反応断面積・微分断面積の評価・整備を目的として、共鳴解析コードAMURを用いた共鳴パラメータの探索を開始し、中性子束縛エネルギー領域において暫定の共鳴パラメータを取得した。その過程においては、ENSDFで与えられていない励起状態が幾つかあることが分かった。
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