農村地域で発生する刈草と農業集落排水汚泥を原料とする小規模メタン発酵システムを開発することを目的とする。刈草からのメタン発生量は多く、メタン発酵原料として有望であるが、刈草の種類によってガス発生量が異なる。そこで、ガス発生量に差が生じる要因を解明し、多種多様な刈草のガス発生量を予測できる手法を開発するとともに、集排汚泥や生ごみとの混合により安定的に処理が可能なシステムの構築を目指す。本システムを適用することにより、集排施設の維持管理費で主要な部分を占める、汚泥処理費と電気料が削減されるとともに、農村地域の低投入でコンパクトな資源循環システムが実現できる。 回分式(バッチ式)メタン発酵試験、連続メタン発酵試験を行った。連続試験では、集排汚泥、生ごみ、刈草の混合条件(実際に近い条件)で、連続式メタン発酵試験を行い、刈草の混合割合や投入負荷の変動がメタン発酵に及ぼす影響を調査した。また、不足しやすいメタン発酵の必須微量元素であるCoまたはNiの添加試験を行い、集排汚泥のメタン発酵における微量元素の添加の必要性を検討した。 その結果、回分式メタン発酵試験において、刈草のADFやC/N比が小さいほどバイオガス発生量が多い傾向があることを明らかにした。また、連続メタン発酵試験においては、生ごみに対する刈草の混合割合を高めるとpHが低下し、発酵が不安定化すること、C/N比が比較的高い刈草を原料として用いる場合には、混合割合に上限があることが示した。さらに、メタン発酵の必須微量元素のうち、Niは集排汚泥から十分な量が供給されるのに対して、Coは不足することを明らかにした。以上より、刈草と農業集落排水汚泥の混合メタン発酵システム実現のためには、生ごみ等のC/Nが低めの原料との混合発酵、Coの添加、C/N比を基準として刈草投入割合を一定レベルに抑える対応が有効であることが示された。
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