研究課題/領域番号 |
17K18351
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研究機関 | 国土技術政策総合研究所 |
研究代表者 |
宮田 征門 国土技術政策総合研究所, 住宅研究部, 主任研究官 (40554986)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 省エネルギー / 省CO2 / 建築物 / 空調 / マルチ型エアコン / ヒートポンプ / 運転効率 / 冷媒 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、より省エネルギーな空調設備設計の促進を目指して、マルチ形エアコン(1台の室外機に複数台の室内機を接続して暖冷房を行うシステム)のエネルギー消費特性の実態を踏まえた新たな設計評価手法を開発することである。平成30年度は、次の3点に関する検討を実施した。 1) 実際の空調機を対象に、温湿度を均一にコントロールできる実験室(1つの室外機チャンバーと3つの室内機チャンバーで構成される)において、室内機の処理熱量に偏在が生じたときの入出力特性を計測した。この計測の結果より、空調機の運転効率(冷凍サイクル)は一番負荷率の大きい室内機の特性に依存することを実証し、これを踏まえて処理熱量の偏在による効率低下を定量的に予測する数理モデルを開発した。 2) 空調機が設置される室について、負荷の偏在の程度をシミュレーションするためのCFDモデルを構築した。床面積70m2程度の事務室を対象としてシミュレーションを行い、室内温熱環境(特に温湿度の上下分布・水平分布)の実測値と計算値を比較した。空調機が安定して動いている場合については精度良く室内温熱環境を推定できるが、空調機の負荷率が低く発停を繰り返す場合には現状の計算モデルでは精度が不十分であることが分かった。平成31年度はこの計算精度の改良についての検討を行う予定である。 3) 1)の機器モデルと2)の負荷計算モデルを組みあわせ、建築物の熱負荷特性と機械のエネルギー消費特性の両方を同時に解く非定常シミュレーションを開発した。標準的なシステムに対して、年間の一次エネルギー消費量を算出できることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の予定どおり順調に進展している。負荷の偏在を再現するシミュレーションについては、一部の条件については現状では精度が充分とは言えないが、今後解消すべき課題は明確になったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に作成した数理モデルを活用して、幾つかの代表的な設計事例に対して年間エネルギー消費量の評価を試行する。特に、外皮(壁、開口部)の断熱・日射遮蔽性能や気密性能、室内発熱量に着目し、これらが年間の一次エネルギー消費量に与える影響を明らかにする。 また、シミュレーションによる設計評価結果を基に、マルチ型エアコンの効率低下を最小限に抑える設計例(熱負荷が大きく異なる窓側と室奥側は同じ室外機系統にせずに別の系統にする、小規模建築物であれば断熱性能を向上させて過度な処理熱量の偏りを抑制する等)を取り纏める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査に係る旅費について、早期に出張計画を立て安価な航空券を手配できたため、7万円の次年度使用額が生じた。これについては、次年度予定されている実験に必要となるセンサー購入費用等の追加分として使用予定である。
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