研究課題
当該年度は昨年度に引き続き、β-Mn型構造を有する高温カイラル磁性体Co-Zn-Mn合金のスキルミオンの研究を継続し、以下の成果が得られた。①Tc=160Kでヘリカル磁性転移を示した後に30Kでスピングラス転移を示すCo7Zn7Mn6について、共同研究を含む様々な測定を行った結果、Tc付近の通常のスキルミオン格子相とは別に、スピングラス転移付近の低温領域に三次元的に乱れたスキルミオンが熱平衡相として存在することを発見した。この新奇スキルミオン相は、β-Mn特有のフラストレートした反強磁性的なMnスピンが強磁性的なCoスピンに及ぼす揺らぎによって安定化されたと考えられる。この研究成果は、カイラル磁性体にフラストレーションが加わることでスキルミオンの安定性が増強されることを意味しており、スキルミオン研究において重要な発見である。この研究成果に関する論文がScience Advancesに掲載された。②Co-Zn-MnのFeドープ系であるCo8-xFexZn8Mn4の純良試料を作製し、共同研究を含む様々な測定を行った結果、Dzyaloshinskii-Moriya (DM) 相互作用の符号(ヘリカル磁性やスキルミオンのスピンの巻き方向)がx=2.7付近で反転することを発見した。この実験結果は、共同研究による第一原理計算に基づく理論計算でも再現されており、この系の複雑なバンド構造内の電子数密度の変化で説明できることが分かった。これらの結果は、DM相互作用の著しい変化や符号反転は、バンドフィリングを制御できる金属カイラル磁性体に普遍的な現象であることを意味しており、金属におけるDM相互作用の理解に大きく貢献する。この研究成果に関する論文がPhysical Review Bに掲載された。
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Science Advances
巻: 4 ページ: eaar7043
10.1126/sciadv.aar7043
Physical Review B
巻: 98 ページ: 155120
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.98.155120
http://www.riken.jp/pr/press/2018/20180915_1/