ニワトリリンパB細胞DT40を用いて、1細胞レベルで、転写因子NFκBの集合体形成のライブセルイメージングを行った。NFκBは転写因子であるため、観察に続いて細胞回収して転写解析を行うことで、NFκBの顕微鏡下でのふるまいとNFκBの制御下にある遺伝子発現の相関を一貫して明らかにすることを目指している。既に、高速共焦点顕微鏡を用いたライブセルイメージングの結果、刺激を受けた細胞の核にNFκBが移入すると、集合体を形成することを明らかにしており、この集合体の形成過程の解析と、この集合体の細胞における役割を調べた。 1.集合体を転写開始部位と考え、数の変化を調べたところ、刺激後に集合体の数が増加した後、減少していた。2.集合体と共局在する転写関連因子の共局在を調べたところ、ヒストン3のアセチル化部位、転写のメディエーター、RNAポリメラーゼとの局在が、ほぼ一致する場合と、部分的に一致する場合があった。3.集合体の局在と遺伝子座の位置関係を調べるために三次元FISH法を用いて、NFκBの制御下にあると予想される遺伝子座の標識を行った。4.集合体は液液相分離によって集合しており、スーパーエンハンサーとして機能する可能性が示唆された。5.細胞観察後に連続して細胞を採取する装置のセットアップを行った。 これらのことから、集合体は活性化されたエンハンサーや転写開始複合体の形成に重要な因子と共局在し、転写に重要であると考えられる。FISH法からはNFκBの制御下にあると予想される遺伝子座とその染色体を標識可能なプローブを完成させた。
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