研究課題/領域番号 |
17K18359
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
間木 重行 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (90708546)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 乳がん / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
がん細胞が薬剤耐性を獲得する過程は、治療前の安定生存が可能な状態から、抗がん剤の暴露により様々な状態の細胞が出現し、後に生き残った耐性細胞が別の生存状態を保つ一連の変化と捉えることが出来る。本研究は、どの分子の発現や活性化状態がどのタイミングで不均一になるかを1細胞計測実験と多変量解析を用いて計測し、一連の過程を数理モデルにより理解することで、乳がん細胞が抗癌剤耐性を獲得する過程における細胞集団内のばらつき(=不均一性)がもたらす意義に関する新たな知見の取得を目的とする。 平成30年度は、昨年度実施したRNA-seq解析の結果から不均一に発現が変化していると思われる約30分子を免疫染色により評価した。その結果、リン酸化型Akt、リン酸化型FOXOおよびオートファゴソーム量の細胞集団内での不均一度を表す複数の指標がタモキシフェン持続投与2-4週において顕著に増加していることが見出された。しかしながら、上記のように不均一度が時系列によって変化する分子が研究開始当初想定していた程取得できなかったため、当初の計画を変更して1細胞遺伝子発現解析を行うこととした。未投与群・タモキシフェン持続投与3週、6週、9週の4群の一細胞遺伝子発現データを今年度末に取得した。 また、薬剤耐性という獲得形質の可逆性を休薬実験により調べたところ、1週間の休薬を挟んでもタモキシフェン持続投与を5週以上行った細胞において獲得された耐性が維持されていたのに対し、3週間の休薬を挟むと上記の細胞の耐性は失われるという興味深い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標は、薬剤耐性獲得過程で発現が不均一になる分子を複数同定し、耐性獲得過程で脆弱になる分子ネットワークを推定することであった。しかしながら、免疫染色によるハイコンテンツイメージングの実験系だけではネットワーク推定が可能なデータ量を取得することが出来なかったため、「やや遅れている」と判断した。この問題を解決するため、1細胞遺伝子発現解析による大規模探索を行う方針に研究の方向性を切り替えたことで、この遅れは直ちに取り戻すことが出来ると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
取得した一細胞遺伝子発現の結果を解析し、抗がん剤耐性獲得過程で不均一になる分子ネットワークを同定する。本年度得られた薬剤耐性の可逆性の結果と遺伝子発現変化のデータを組み合わせて薬剤耐性獲得における数理モデルを構築し、耐性獲得機構に関する新規知見の発見を目指す。
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