血清プロテオーム解析では、血中のタンパク質濃度のダイナミックレンジが非常に広いため、超微量なサイトカインなどのタンパク質を観測することが難しく、炎症関連タンパク質の網羅的分析は現状のプロテオーム解析法では困難を極める。そこで、本研究では複数の炎症性サイトカイン受容体を用いて、様々な炎症誘導・抑制タンパク質を濃縮し、無孔子逆相カラムを用いた高感度な液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)システムによって血中の炎症誘導・抑制タンパク質の網羅的な分析法を開発することを目指す。さらに、開発した方法を用いて血中の新規炎症誘導タンパク質候補を探索し、本法が炎症のメカニズム解明、診断マーカーの開発、創薬の開発などに役立つ分析法であることを実証する。 研究計画の1年目である平成29年度では、血中の炎症関連タンパク質を集めるために、遺伝子組み換え技術を用いてIL1受容体細胞外ドメインとIL6細胞外ドメインそれぞれにHalo tagを融合した発現プラスミドを作製し、動物細胞にトランスフェクションしてタンパク質合成を行った。次に、この合成した複数のHalo-tag融合受容体とHalo-tagリガンドビーズを反応させ、受容体結合ビーズを作製した。さらに、この作製した受容体ビーズが機能しているかを確認するために、この受容体ビーズと血清を反応させ、LC-MSを用いて血清中の既知のインタラクターが濃縮されていることの確認に成功した。これにより、血中の新規炎症誘導タンパク質候補の探索の準備が整ったと考えている。
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