研究課題
前年度までに確立した「新規蛍光Romanescoと蛍光寿命イメージングの組み合わせによる生細胞RNAイメージング技術」を用いて内在性遺伝子転写活性のライブセルイメージングを行うため、本年度はまずRomanescoが内在性遺伝子の3'UTR領域にノックインされたセルラインを作製した。外部刺激に応答して誘導される転写活性をイメージングにより可視化し、細胞集団レベルでの転写動態を解析したところ、これまでの知見と一致する周期的な転写活性化が観察された。さらに単一細胞レベルでの転写動態を解析したところ、集団で見られたのと同様の周期的活性化が個々の細胞についても起こることが見出された。これは本研究計画において確立されたライブセルRNAイメージング技術によって初めて明らかとなった新たな知見である。さらに、ゲノム構造を可視化可能な蛍光色素とRomanescoの同時イメージングを行った。外部刺激によりゲノム構造がゆるやかに変化する様子が観察されたが、内在性遺伝子の転写活性化はゲノム構造の変化に先立って起こった。すなわち、ある種の遺伝子はゲノム立体構造の変化を伴わずに転写活性化しうることが明らかとなった。また、開発した新技術を用いることで、遺伝子発現過程における転写産物の核内微細構造への局在化イメージング、細胞質RNAのストレス顆粒への移行動態解析、神経細胞におけるリボ核タンパク質輸送動態のイメージングにも成功した。以上の研究実績により、本研究計画で目標としていた「遺伝子転写活性とゲノム三次元構造の経時的同時計測」が無事達成された。今後本研究計画で得られた成果を元に、遺伝子転写活性化機構の詳細やRNA局在化によるタンパク質発現の制御機構について研究を発展させて行きたいと考えている。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
Angewandte Chemie International Edition
巻: 57(32) ページ: 10137-10141
10.1002/anie.201804731