尾動脈から採取した自己血を硬膜下に持続注入し、その後血腫を除去したラットモデル(急性硬膜下血腫除去モデル)を用い、血中及び脳皮質における酸化ストレスマーカー(8-OHdG)の上昇を確認した。本モデルを使用し、水素投与群、非投与群、sham群に分けた。3群間で血液ガスパラメータに差がないことを確認した。6時間後及び24時間後の組織学的検討において、水素投与群では、脳皮質における8-OHdG陽性細胞数の減少、TUNEL陽性細胞の減少、Water contentの減少を認めた。また、水素投与群では、24時間後の脳損傷体積の減少、神経学的所見の改善を認めた。つまり、急性硬膜下血腫除去モデルにおいて、水素投与は酸化ストレスを抑制し、機能改善効果を示すことを見出した。また、尾動脈から採取した自己血を脳内に持続注入し、その後血種腔内にrecombinant tPAを注入の上血種を吸引除去したモデル(脳出血除去モデル)においては、病理学的検討のみならず神経機能上も水素の効果は確認できなかった。後者のモデルにおいては、個体により脳損傷の程度に差があることを確認したため、negative resultとなった可能性があると考えている。本研究により、少なくとも急性硬膜下血腫術後における水素投与は新たな治療戦略の1つとなり得ることが示唆された。今後、本モデルを用い、水素投与がBBB破綻抑制効果を有するかを検討する予定である。
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