研究課題/領域番号 |
17K18373
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
圓谷 志郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (40549664)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | グラフェン / 高エネルギーイオン照射 / 異種原子ドーピング |
研究実績の概要 |
グラフェンの原子レベルの構造制御によって電子状態や物理的性質の制御を可能にするために,グラフェンをはじめとした二次元層状物質と異種原子を含む薄膜とのヘテロ構造に高エネルギー重イオンを照射することで任意の異種原子をドーピングする方法(高エネルギーイオン照射法)の開発を行っている。 本年度は,グラフェン上の微細な局所領域への異種原子ドーピングを可能にするイオン照射装置を製作した。同装置を用いてグラフェンとフッ化リチウムのヘテロ構造に高エネルギーの銅イオンを照射することで,グラフェンの任意の領域にフッ化グラフェンの微細なパターンを作製することに成功した。得られたフッ化グラフェンは,0.5eV以上のバンドギャップを有するとともに,フッ化の度合いに伴って電気抵抗が増大することを明らかにした。また,グラフェン以外の二次元層状物質である六方晶窒化ホウ素(h-BN)についても本手法により任意の領域にフッ化BNを作製できることが分かった。 一方で,液体窒素温度でグラフェン上に窒素ガスを吸着させ重イオンを照射することで作製した窒化グラフェンにおいては,化学的方法で合成された窒化グラフェンと原子構造が異なり,原子空孔を伴わないグラファイト構造を有することを示唆する知見が得られた。このため,来年度は原子構造を詳細に明らかにすることで,高エネルギーイオン照射法によるグラフェン化合物生成の機構を探索する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に実施した窒素とグラフェントとの接合領域へのイオン照射によって得られた窒化グラフェンが,化学的方法で合成される窒化グラフェンとは異なり,原子空孔を伴わないグラファイト構造を有することを示す知見が得られた。このため当初の計画を変更し,来年度において窒素とグラフェンとの結合形態をXAFS等により解析し,ドーピング機構の詳細な理解を得ることにした。
|
今後の研究の推進方策 |
高エネルギーイオン照射法におけるグラフェンへの異種原子ドーピングの機構について明らかにするため,本手法で得られるグラフェン化合物の原子構造や電子状態をXAFS,光電子分光や第一原理計算により明らかにし,化学的手法で得られたグラフェン化合物と比較検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施した窒素ガスとグラフェンとの接合領域へのイオン照射によって得られた窒化グラフェンが,化学的手法で合成される窒化グラフェンとは異なり,原子空孔を伴わないグラファイト構造を有することを示す知見が得られた。このため次年度において,窒素とグラフェンとの結合形態をXAFS等により解析し,ドーピング機構の詳細な理解につなげることとした。次年度使用額はその経費に充てることとしたい。
|