研究課題/領域番号 |
17K18374
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
米内 俊祐 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 加速器工学部, チームリーダー(定常) (00415431)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線 / 炭素線治療 / 二次中性子 / 晩発性影響 / 照射場 / モンテカルロシミュレーション |
研究実績の概要 |
放射線治療では潜在的に治療部位以外にも放射線が照射されるため、治療後の晩発影響リスク(特に二次がんリスク)が存在する。X戦地領については治療患者の疫学研究を基に線量と二次がんリスクの関係を示唆する研究結果が報告されている。近年普及が進んでいる陽子線や炭素線を用いた粒子線治療についても患者の被ばく線量評価が行われているが、X線治療では存在しない高エネルギー中性子や高LET荷電粒子の影響などにより、線量リスクモデルを用いた定量的評価は実現できていない。 本研究では、炭素線治療場で生成される中性子に着目し、2次がんリスクモデル構築に不可欠な生物実験を実現するためのエネルギースペクトル可変中性子照射場の概念設計及び実験的検証を行う。 平成29年度においては、モンテカルロシミュレーションのための計算システムの構築を行い、中性子エネルギースペクトルのターゲット依存性、角度依存性をモンテカルロシミュレーションを用いて取得した。また、炭素線治療室で評価された中性子エネルギースペクトルが持つ3つのピークの中で、熱中性子を除いた数MeV, 100 MeV付近のピークに着目して、それらのピークの比率を変更させる方法をモンテカルロシミュレーションを用いて明らかにした。 次年度において、シミュレーション計算の実験的検証のためにターゲット及び減速フィルターの設計を行う予定である。実際の照射場において、中性子エネルギースペクトルをより簡易的に可変させるための工学的検討をモンテカルロシミュレーションとともに進め、実験的検証も開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した方法が実現可能であることをモンテカルロシミュレーションにおいて実証した。計画時にはより複雑なターゲット、減速フィルターの組み合わせを検討することで、より精密な模擬照射場を構築可能と考えたが、ターゲット、減速フィルターの加工の複雑さや実験的検証における不確かさを考慮し、より単純なターゲット、減速フィルターの組み合わせを検討することを優先したため、計画した最適解を求める手法の確立は行っていない。
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今後の研究の推進方策 |
中性子エネルギースペクトルをより簡易的に可変させるための工学的検討をモンテカルロシミュレーションとともに進める。設計したターゲット及び減速フィルターの設計、加工を行い、それらを用いた実験的検証を重粒子線加速器を用いて開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の計画通り、ワークステーション1台の購入のみの使用である。生じた次年度使用額は購入金額の端数と考えており、特段の理由はない。次年度、計画している物品購入時に使用予定である。
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