研究課題/領域番号 |
17K18376
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
岩男 悠真 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 計測・線量評価部, 博士研究員(任常) (40758330)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 体動計測 / ICP |
研究実績の概要 |
頭部体動を非接触かつマーカレスで測定するシステムを開発し,マネキン実験及びボランティア試験により,その性能を明らかにした. Microsoft Kinectをレンジセンサとして,初期フレームからの姿勢変化を,レンジセンサから得られる各フレームの3D形状マップのICPマッチングにより明らかにする.このとき,高精度な体動測定を行うため,マッチングに用いる領域の選択方法について検討を行った.ICPマッチングは,2つの形状マップの重なり具合を評価し,反復計算により2つのマップを徐々に重ね合わせていく手法である.ここで,頭部モデルにおいて,形状マップの特徴領域は,目鼻を含む凹凸が多数含まれる領域であり,マッチング対象領域内において,この特徴領域の占める割合が精度に大きく影響することをマネキンとモーターステージを用いた実験によって示した.具体的には,マッチング対象領域を,頭部全体ではなく,目鼻を含む小領域に絞ることで,各軸周りの平行移動で誤差1㎜程度,回転で1degree以下の精度でトラッキングが可能となった.この結果より,1台のセンサでも高精度に体動を測定可能であることが示された. 試作したシステムを用いて,拘束なしで椅子に座った状態での頭部の動きを測定するボランティア試験を行い,体動の定量的な解析を行った.結果より,測定時間内(20min)において,いずれの被験者も数㎝または,10数degree程度の動きが確認され,ホフマンデジタルファントムを用いた疑似的な体動を付与した再構成データの解析により,大きな画質低下の要因となることが実証された.一方で,被験者の動きをモーターステージとマネキンヘッドにて再現し,試作システムによる測定結果を用いた体動補正を行うことで,画質の大幅な向上が実現できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頭部体動を高精度にトラッキング可能なシステムを構築し,モデル実験等を通してその性能評価を行った.当初の予定では,センサを2台構成にすることで,トラッキング精度とロバスト性の向上を図っていたが,トラッキング対象領域の選定により,1台のセンサで十分な精度でトラッキング可能であることを示した.これにより複数センサを用いる場合の,精度低下の大きな要因となるセンサ間の位置合わせや,センサ同士の干渉といった問題を解決し,よりロバストなシステム構成を実現できた.また,モデル実験やボランティア試験を通し,体動トラッキングシステムの性能評価や,体動が画質に与える影響についてのデモンストレーション,また疑似的な体動補正プロセスによる画質向上についての検討を行った. 一方で,マッチング対象領域の設定はマニュアル操作で行っており,センサから得られる画像情報の利用に関しては今後の検討課題である.また,提案システムによるモーショントラッキングは,マルチプロセッサ処理で実装されており,当初の予定であるGPU実装とは異なるものの,リアルタイム化可能なフレームデータの処理速度を有している.
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今後の研究の推進方策 |
29年度の進捗をもとに,実際の再構成プロセスにおいて体動補正処理を実装する.これに際し,外部センサによる体動測定データとPET撮像データとの時間同期,また座標系の統一が大きな課題となる.前者については,PET測定を行うPCと体動測定を行うPCを同期させ,同一のタイマータグを埋め込む方法について検討を行う.また,座標系の統一には,PET画像と外部センサから得られる距離マップから得られる特徴点どうしをマッチングする手法について検討し,複数特徴点のマッチング結果から,座標系の統一を行う手法を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は,計算用WorkStationとして,既存のものを用いたため新規購入には至らなかった.また,使用したセンサもKinectのみであり,別途ステレオカメラ等の購入を行わなかったため,その分の予算が繰越金として発生した. 今年度は,安定したリアルタイム化の実現のため,GPU実装を視野に入れた検討を行っており,そのための専用WorkStationの購入,また生産終了したKinectの代替機としてステレオカメラの購入などを検討しており,計上していた予算に加え,繰越金を加算した予算でこれら物品の購入にあてたい.
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