研究実績の概要 |
服装が異なる場合(服装相違条件)、現状科学捜査で用いられる手法では解析に用いる部位を限定することがなされるが、識別精度が低下することが課題である。この課題に対し、OU-ISIR dataset Bを用い、筆者らが開発した特徴点と形状特徴を用いた歩容解析手法に関して、法科学的な観点から服装相違条件における個人識別精度の評価を行い、服装相違の条件に対して頑健であることが分かった(井元他, 法科学技術学会誌, 2019)。 次に、フレームレートが低い場合の解析精度の低下が課題である(実用を想定した2秒以下の動画像)。この課題に対し、最小二乗法誤差基準に基づくコスト関数を用いた輪郭動態トラッキング手法(Driscol, 2012)及び偏微分方程式に関するレベルセット法を歩容シルエット動画像に適用したが、精度の高いフレーム間補間ができなかった。そこで、高さ方向の制約条件を課した新たな輪郭トラッキング手法を開発し、前述の2手法よりも精度の高いフレーム間補間が可能となるという予備的な結果が得られた。これについては、来年度に個人識別精度の評価や行動認識データへの適用を行い、論文化及び学会発表を行う。 最後に、撮影角度が実空間で5-10度程異なる場合の解析精度の低下が課題である(同じく、実用を想定した2秒以下の動画像)。この課題に対し、関節位置の確率分布を用いた確率密度値の時系列情報を比較する手法を検討し、撮影角度が異なる場合における個人識別精度の精度の頑健性が向上する可能性が見出された。まだ予備的な結果のため、来年度の更なる検証を予定している。 以上本研究課題に関して、論文1本、国際会議[査読付き]1件、国内学会発表を2件を行った。
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