研究課題/領域番号 |
17K18387
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
中津 祐一郎 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (70572113)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 麻疹ウイルス |
研究実績の概要 |
簡便な麻疹ウイルスのウイルスタンパク質間相互作用の検出システムを構築するため、相互作用を検出したい2種類のウイルスタンパク質の末端に、二断片に分割したルシフェラーゼタンパク質のそれぞれを融合させたキメラタンパク質発現プラスミドを作製し、細胞内に同時に発現させた際の2種類のウイルスタンパク質の相互作用を、ルシフェラーゼ断片の機能補完を指標に検出する系の構築を検討した。その際に使用するルシフェラーゼとして、分子量19kDaと非常に小さく、発光シグナルも強いNanoLuc(プロメガ社)を用いる事とした。相互作用を解析するタンパク質としては、麻疹ウイルスの細胞内タンパク質であるN、P、V、CおよびMタンパク質を試した。その際、2種類のルシフェラーゼ断片を各ウイルスタンパク質のN末端側およびC末端側に融合させた全パターンの発現プラスミドを作製した。それらの全ての組み合わせを293T細胞に共発現させた結果、これまでに相互作用が報告されているNタンパク質とPタンパク質の相互作用が高感度に検出できた。また、これまでに報告されていない麻疹ウイルスタンパク質間の相互作用もいくつか検出された一方で、他の検出系では相互作用が報告されているNタンパク質とMタンパク質の相互作用は、今回のルシフェラーゼ断片の補完系では検出出来なかった。さらに、これまでに相互作用が検出できた組み合わせについては、アミノ酸変異体の作製および詳細な相互作用領域の同定を実施しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に予定していた、ルシフェラーゼタンパク質断片の補完系を用いた、麻疹ウイルスのウイルスタンパク質間相互作用解析系の確立は順調に進んでいる。また、これまでに別の解析方法で相互作用が報告されていたのに、本研究では相互作用が認められなかった組み合わせについても、ウイルスタンパク質の部分断片を使用する事で検出可能かどうかを検討中である。 これまでに本方法で相互作用が検出可能であったものについては、アミノ酸変異体を作製し、ウイルスタンパク質の相互作用責任領域のより詳細な解析も進行中である。また、平成30年度に予定していた、特定のウイルスタンパク質相互作用を安定して検出可能な恒常発現細胞の樹立にも着手し始めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ルシフェラーゼタンパク質断片を用いた、新規麻疹ウイルスタンパク質相互作用検出系は、問題なく構築する事ができた。今後は当初の予定通り、上記の相互作用を安定して検出できる恒常発現細胞を樹立し、低分子化合物やペプチドなどを用いた相互作用の阻害解析を実施し、麻疹ウイルスの新規阻害剤の検索を行う。また同時に、各相互作用にとって重要なアミノ酸領域を同定し、ウイルスの増殖過程の各段階(ウイルスRNA合成や粒子形成など)における各相互作用の意義の解析も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施予定であった、麻疹ウイルスの増殖における相互作用領域の重要性の解析が一部未実施である事と、現在までに完了している解析が効率よく実施出来たため、次年度使用額が生じた。 平成29年度に実施予定であった解析を平成30年度に実施するために使用する。また、平成30年度に当初から予定していた解析は、比較的費用が多く必要なものがあるため、そちらの方にも使用する。
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