肺神経内分泌腫瘍は,定型カルチノイド,非定型カルチノイド,大細胞神経内分泌癌(LCNEC),小細胞肺癌(SCLC)の主たる4組織型に分類されているが,その分子生物学的な発生メカニズムは明らかではなく,新たな治療法の開発には,その解明が極めて重要である.私たちは,LCNECおよびSCLCの有望な治療標的遺伝子群を同定するとともに,非小細胞肺癌とLCNECとの混合型LCNECにおいて,各成分を個別に解析する手法を用い,LCNEC成分の由来について遺伝子プロファイルの解析を行った.本研究では同じ手法を用いながら,定型カルチノイド,非定型カルチノイド,および混合型SCLCの遺伝子解析も行い,肺神経内分泌腫瘍の発生機序を体系的に明らかにし,新しい分子標的治療法確立への手がかりを得ることを目的とする. これまでに肺カルチノイド 40例 (TC 29例,AC 11例),NSCLCとの混合型SCLC 26例を対象とし,対象症例の抽出,研究用データベースの作成を行った.HE 標本を再度レビューし,WHOの診断基準を満たしているか確認したうえで,年齢,性別,喫煙指数,病理病期,腫瘍マーカー,CT 画像,再発の有無,再発時の化学療法レジメンと効果,生命予後等の臨床因子を抽出した.今年度は、これらの症例についてゲノムDNAとRNAの抽出を行い、混合型SCLCについてSCLC成分と非小細胞肺癌成分の両方のゲノムDNAターゲットシークエンスを行った.これにより,肺神経内分泌腫瘍の発生メカニズムを解明し,新規治療開発への道筋をつけることを目的とする.以上は,肺神経内分泌腫瘍の分子生物学的な発生機序を解明するうえで効率的な戦略であり,新たな治療法の開発の手がかりになると考えられる.
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