2019年度は,「大学生の発達障害」に関するメンタルヘルスリテラシー(以下,MHL)の規定要因の検討と, MHLの向上を目的とした動画教材による介入を行った。なお,2019年度は,2018年度の研究で示された,発達障害の学生への支援提供意図に関連をもつMHL(「適切な自己対処に関する知識」,「援助を受けることへの肯定的態度」,「(大学教員のみ)アドバイスを受けることへの肯定的態度」,「情報の入手方法に関する知識」)に注目して,調査を実施した。 「大学生の発達障害」に関するMHLの規定要因の検討では,環境要因として間接的な接触経験,個人要因として共感性を取り上げ,大学教員と大学生を対象に検討を行った。MHLを目的変数,間接的な発達障害への接触経験と共感性,それらの交互作用を説明変数とした,階層的重回帰分析を実施した。その結果,大学教員では,間接的接触経験と共感性のうち「他者志向的反応」と「視点取得」が多くのMHLと正の関連を示した。また,大学生においては,間接的接触経験と共感性のうち「視点取得」と「自己志向的反応」が多くのMHLと関連を示した。 また,大学教員と大学生を対象に,MHLの向上を目的とした動画教材による介入を実施した。動画教材は(1)発達障害の概要,(2)大学生活で困ること,(3)自己理解と周囲の支援の重要性,(4)発達障害に関する情報を得るための方法,(大学教員のみ)(5)教員と学生相談室のスタッフが連携して支援した事例から構成されていた。動画教材の効果検証のため,動画の視聴前後に質問紙への回答を求めた。動画教材の視聴前後の質問紙の得点を比較するために,対応のあるt検定を実施した。その結果,大学教員と大学生いずれの結果においても,直接的支援提供意図,支援機関の利用の勧め,MHLの得点が,動画教材の視聴後の方が視聴前よりも,有意に得点が高いことが示された。
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