研究課題/領域番号 |
17K18403
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
原 聡史 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 研究員 (80739582)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノムインプリント / Dlk1-Dio3ドメイン / IG-DMR / ヒト-マウス配列置換 |
研究実績の概要 |
本研究では、マウス12番染色体/ヒト14番染色体上のインプリント遺伝子群(DLK1-DIO3ドメイン)の発現制御に重要な領域であるIG-DMRがヒトDLK1-DIO3ドメインを制御する分子機構を、モデルマウスを用いて明らかにすることを目的とした。これまでにマウスIG-DMRの一部をヒトIG-DMRにおける類似の配列(hTR)に置換したマウス(hTRマウス)を作出した。今年度は、予備実験で認められたhTRマウスの表現型の精査およびhTR配列のエピゲノム状態の解析を行った。 予備実験において、hTR配列を父由来で遺伝したマウスはhTR配列が完全にメチル化され、野生型と同様に生存したことから、これらのマウスはすべて正常と想定された。しかし詳細な観察の結果、生存した個体は一部分であり、多くは胎生致死となっていた。同時に、父方アレル上のhTR配列は、個体によってDNAメチル化状態が大きく異なり、それと相関してインプリント遺伝子の発現異常および回復が認められた。また、マウスIG-DMRにおけるインプリント維持に重要なZFP57のChIP解析を行った結果、父方アレル上のhTR配列周辺領域へのZFP57の蓄積はすべての個体で低レベルであった。このことから、インプリントが維持されている一部の個体はZFP57以外の因子によってメチル化インプリントを維持していると考えられた。 一方、hTR配列を母由来で遺伝した場合、当初仔が遺伝子型にかかわらず致死になるという表現型が予備実験で認められていたものの、C57BL/6N系統へ戻し交配を行うにつれて致死率は減少し、N5世代以降表現型が完全に認められなくなったことから、遺伝的背景の影響であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の1年目に記載された実験のほとんどを遂行することができた。予備実験で得られていた結果を精査したところ、想定とは一部異なっていたものの、興味深い表現型であることが示された。また、二年目に予定している酵母ツーハイブリッド(Y2H)スクリーニングに向け、既に導入を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ChIP解析については、ZFP57と相互作用するTRIM28およびヒストンH3K9me3についても同様に解析を行っていく。また、当初ZFP57あるいはTRIM28をベイトとしてY2Hスクリーニングを計画していたが、今年度の研究からZFP57はhTR配列との結合が極めて弱いことが示唆された。そこでマウスTRIM28をベイトにY2Hスクリーニングを行うことで、TRIM28と相互作用してhTR配列に結合する因子を同定する。その後、候補となる因子のヒトにおける保存性およびインプリント維持への関連性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ChIP解析を当初予定していたよりも少ない支出で行うことができたために生じた。次年度さらに解析する因子の範囲を広げるため、ChIP解析のためのキットや抗体の購入費用に充てる。
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