研究課題/領域番号 |
17K18404
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
本村 健一郎 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー・感染研究部, 共同研究員 (00724329)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 合胞体栄養膜細胞 / 妊娠合併症 / 二本鎖RNA / パターン認識受容体 / Apoptosis |
研究実績の概要 |
本研究の元となる仮説は、二本鎖RNA (double-stranded RNA: dsRNA)が合胞体栄養膜細胞(Syncytiotrophoblast: STB)に発現するdsRNA受容体(TLR3, RIG-I, MDA5)を介して様々な反応を引き越し、これが胎盤障害、母体炎症状態の原因となるというものである。そして、この仮説を検証することで、新たな妊娠合併症発症機序を明らかにすることが本研究の目的である。 初年度の平成29年度は、dsRNAによってSTBに誘導される因子の網羅的解析と、apoptosisの解析を中心に検討を実施した。まずdsRNAによってSTBに誘導される因子の網羅的解析では、STB初代培養系を用いてmicroarray解析を行い、結果をIngenuity pathway analysis (IPA)で解析し、dsRNAによって活性化される複数のpathwayを同定した。また、dsRNA刺激によって産生されるサイトカイン・ケモカインをmultiplex assayで検討し、蛋白レベルで炎症性サイトカイン、ケモカインが産生されること、またそれらのサイトカイン・ケモカインが他のPathogen associated molecular patterns (PAMPs)では産生されないことを見出した。 続いてApoptosisの解析に関しては、dsRNAによってSTBに誘導されるapoptosisが主にミトコンドリア経路であることをcapsase9の活性化、BCL2 familyの活性化を検討することで見出した。また、time-lapse imagingを用いて、多核化したSTBがどのようにapoptosisを起こすのか、その形態を観察した。その結果、同一の細胞質内に存在する複数の核は、同時にapoptosisを起こしていることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初代培養細胞を用いたin vitroの解析は、元々初代培養の系を確立しているため計画通り順調に進行している。 マウスを使用したin vivo解析に関してはも元々得ているデータがあり、評価アウトカム(胎児体重)も決まっている。このアウトカムを用いてさらに投与するdsRNA濃度の最適化を実施し、詳細な解析のための条件検討を行った。 臨床検体を用いた検討に関してはまだ充分な症例数収集ができていないため、正常検体を用いた条件系統を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
in vitro解析に関しては、網羅的解析で得たpathwayのうちどこに着目するかを決定し、そのメカニズム解析を実施する。この点に関しては当初RNAiによる解析を念頭に置いていたが、lipofectionによるsiRNAのtransfectionでは、非特異的にdsRNA受容体を介したシグナルを惹起してしまうことがわかったため、さらなる条件検討を進めるとともに、他のtransfection方法の導入を検討している。 in vivo解析に関しては、胎盤変化のtranscriptome解析を実施を予定している。また、TLR3 KOマウスを用いてメカニズム解析を進めていく。 臨床検体を用いた解析に関しては臨床部門との連携を強化し、検体収集および解析を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
臨床検体解析のための解析が本格的には始まっていないため、その分の試薬代を平成30年度に繰り越した。 残高は、現在のところ臨床検体の解析およびマウス胎盤のtranscriptome解析に使用することを計画している。
|