研究実績の概要 |
本研究は、合胞体栄養膜細胞(Syncytiotrophoblast: STB)に発現するToll-like receptor 3 (TLR3)をはじめとした二本鎖RNA受容体 (double-stranded RNA: dsRNA受容体)が、dsRNA刺激により様々な反応を引き起こし、胎盤障害、母体炎症状態の原因となるという仮説を検証することが目的である。それにより、新たな妊娠合併症発症機序を明らかにできる可能性がある。 平成30年度は初年度に得られたin vitro検討の結果の検証を行うとともに、マウスを用いたin vivoでの検討を行った。in vitroでSTB様に分化させた満期胎盤由来初代栄養膜細胞(differentiated cytotrophoblast : dCTB)を合成二本鎖RNA(Poly I:C)で刺激することで炎症性サイトカイン・ケモカインが産生されることを確認していたが、新たに抗ウイルス作用を持つinterferon lambda1, 2, 3の産生を確認した。さらに、STBがIFIT、MX1、OASといった分子を発現することを確認した。この結果はSTBに発現するdsRNA受容体が胎盤・胎児のウイルス感染制御に重要な役割を担っており、ウイルス感染によって誘導されうる妊娠合併症の発症に関与することを示唆する。 またin vivo検討では、妊娠マウスへの二本鎖RNAの投与により胎仔体重が減少することを確認していたが、二本鎖RNA受容体欠損マウス(Tlr3-/- mouse)ではその胎仔体重減少がキャンセルされることを見出した。この結果は、胎仔体重減少がToll-like receptor3を介していることを示している。 以上の結果を踏まえ、現在はその詳細なメカニズム解析を実施している。
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