研究課題/領域番号 |
17K18405
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
清水 泰岳 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 器官病態系内科部, 医師 (80751198)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 糞便移植 / 小児 |
研究実績の概要 |
近年、腸内細菌叢と様々な疾患との関連が報告されており、乱れた腸内細菌叢を是正する方法として糞便移植が注目を集めている。本研究では、計8例の潰瘍性大腸炎(UC: ulcerative colitis)患者に糞便移植を実施し、移植前後での腸内細菌叢の変化等について解析を行った。その結果、移植前には全例で腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)を認めた。また、糞便移植によって6例でドナー型の細菌叢に近似させることができ、うち2例では臨床的寛解を達成した。残る4例中2例では臨床症状の改善は認めたが、予後の改善には寄与しなかった。これらの成果の詳細は、日本消化管学会学術集会、The 2019 Crohn’s & Colitis Congress(米国)で報告した。また、同時に今年度中の論文化を目指している。 また、より効果的な注入便の前処理法の探究のため、嫌気的環境で便の撹拌処理を行うことにより、大気下で処理を行う従来の方法に比べて、偏性嫌気性菌を生きた状態で保持することができるかを検討した。その結果、最優勢偏性嫌気性菌6菌群は、撹拌処理により菌数が有意に低下する傾向が見られたが、Clostridium coccoidesおよびBacteroides fragilisにおいては、嫌気性処理法の方が優位に攪拌後の生菌数が高い結果となり、これらの菌群を保持するという上での嫌気的処理法の優位性が示された。一方、潰瘍性大腸炎で増加することが報告されているEnterobacteriaceaeなどの通性嫌気性菌は、撹拌処理後に菌数が著増した検体もあった。本成果についても今年度中の論文化を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糞便移植研究については、腸内細菌叢の解析とその確認に時間を要しているため、当初の予定よりも遅れている。 より効果的な注入便の前処理法を探究する研究については、方法論を見直し、追加の検体を集めて、再実験を行ったため、当初の予定よりも遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、研究は終了し、得られた解析結果について、その妥当性の確認作業を行っている。早い段階で、論文としてまとめ、投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
腸内細菌叢の解析結果の確認および論文執筆を現在進めているが、最終の確認作業に時間を要している。「より効果的な注入便の前処理法の探究」については、今年度中に、国際学会での発表を目指す。「次年度使用額」は、それらの解析、論文の英文校正、学会発表費用に使用させていただく予定である。
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