研究実績の概要 |
日米で用いられる大学発ベンチャーのデータには定義差が存在する。これが大学発ベンチャーの国際的な比較をする上での障害となっており、国内研究は日本特有の分析にとどまる。近年Googleに買収されたSCHAFTに代表されるように世界的に注目を集める優れた技術を有する企業が存在し、かつマザーズ上場による時価総額の上位に大学等発ベンチャーが複数占められている一方、国内大学発ベンチャー研究において課題が散見される報告が多い要因は、母集団の不正確さに起因すると仮説を立てた。本研究では、国内研究において設立年数が経過したベンチャーでは自社研究開発や特許出願を行うこと(小倉,藤田, 2012)に着目し、国内大学発ベンチャーのうち特許出願大学発ベンチャーに標本を絞ることで、米国定義との差を補正した、国内大学発ベンチャーの成長性・施策効果等の網羅的な解析を目的としている。 本年度は、研究開発型大学発ベンチャーについて、ベンチャー設立からの成長段階、分野で展開した各4箇所における成功要因(促進因子・阻害因子)を評価するための、アンケートの調査票の設計、およびwebアンケートの実施を行った。アンケート調査票の設計においては、成長性の評価として資金調達のフェーズごとの意識変化を観測できるような設計を行い、また入手可能な範囲で財務情報を入手した。アンケートの回収数は947社中108社(11.4%)であり期待した20%には達しなかったものの、通常の企業へのアンケート経験における想定の範囲内で回収することが出来た。
|