がんの不均一性が治療抵抗性の要因として知られ、細胞レベルでの検査を要するがその検査法は確立していると言い難い。既往研究では、光分解性ゲルに包埋培養中の任意の細胞に光照射することで、標的の細胞を摘出可能な、細胞分離システムを開発してきた。この細胞分離システムでは細胞の形態の違いを基準として細胞を分離する。 細胞の形態は、複雑な細胞シグナルに基づいて変化するため、細胞機能を端的に表す指標となり得るが、そのエビデンスは不足している。そのため、本研究課題では、細胞形態とがん悪性度に関するエビデンスの取得を目的とした。 平成29年度の研究成果では、光分解製ゲル中で形態が異なるマウス乳がん細胞をコロニー様に増殖する細胞と顆粒状に増殖する細胞の2種類に分類し、サブポピュレーション細胞を得た。分取た細胞は、各々異なる形態を示した。各々の細胞をマウスに移植すると、腫瘍の増大速度や転移頻度が異なる結果が見られた。本研究成果のデータは、国際誌に掲載されている。限局された条件ではあるものの、本研究課題の目的である細胞形態とがん悪性度のエビデンスを取得した。 平成30年度は、形態を基準に得たサブポピュレーション細胞を繰り返し継代した後、形態および機能を維持するか検討を始めた。しかし、地震により繰り返し継代した細胞を失い、継代を行いなおすといったアクシデントがあった。サブポピュレーション細胞として樹立後、20継代までの細胞を保存し、これらの細胞がディッシュ上で大きな形態変化が生じないことまでは確認できた。マウスに移植後、平成29年度の結果と同様になるかは検討中である。
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