研究課題/領域番号 |
17K18409
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
上田 高生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (20760284)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | stereology / ステレオロジカルバイアス / 遺伝アルゴリズム / 粒子形状 / 粒径分布 |
研究実績の概要 |
粒状材料の粒子サイズや形状は基本物性に大きな影響を及ぼすため3次元的(3D)な真の情報を取得することが重要であるが、実際には顕微鏡観察等による粒子の投影図や断面などの2次元的(2D)な計測で代替せざるを得ない場合が多い。この課題を解決するため、複数の2D実測値から3D実態を予測する手法の開発を目指して研究を実施している。 本年は、様々な軸長比の楕円体粒子モデルを数値解析的に作成し、粒子モデルの2D値分布(断面積、断面長軸長、断面長軸/短軸長比、周長)と3D値(体積、長軸長、長軸/中軸長比、長軸/短軸長比、表面積)を関連付けた変換データベースを構築した。また、遺伝アルゴリズムを用いた最適化手法により、観測対象の粒子群に最尤な粒子モデルの組み合わせを決定することで、観測2D値分布から3D値を予測する手法を開発した。 本手法は、①様々な粒子群に対応できる汎用性と②複数の指標を同時に予測できる利便性を有しているという点で既存の手法と比較して大きく進展している。すなわち、どのような粒子群を対象としても、計測対象とする複数の指標を選択し、それが現実的に取り得る範囲に設定した3D粒子モデルを作成すれば、その粒子群に特化した変換データベースが自動的に構築され、複数の3D指標を同時に予測することができる。そのため、適用範囲は粒子・細胞・結晶・ボイド等多岐に渡り、様々な産業分野での粒子等の3D物性把握の基本ツールになる可能性がある。 プロジェクト2年目となる平成30年度は、実験検証により本手法の有効性を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成29年度の目標として、3D実態予測手法の基礎要素として、①3D粒子モデルの開発、②変換データベースの構築、③3D粒子モデルの組み合わせ最適化手法の開発を挙げていた。これについては、①ジオデシグリッドを用いた任意の軸長比・表面粗度を表現する3D粒子モデルの開発、②モンテカルロ法と立体角計算を併用した3D粒子モデルの変換データベースの構築、③遺伝アルゴリズムによる3D粒子モデルの組み合わせ最適化手法の構築、をそれぞれ完了しており平成29年度の目標を達成した。 また、計画では、上記要素を統合した3D実態予測プログラムの開発を平成30年度の目標としていたが、現在時点でそのプロトタイプが完成している。 以上より、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。 なお、X線CT解析による実験検証は、当初の予定通り平成30年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、①3D実態予測プログラムの開発と②X線CT解析による実験検証を実施する。 ①については、平成29年度に個別に開発した、(i)ジオデシグリッドを用いた3D粒子モデルの構築プログラム、(ii)モンテカルロ法と立体角計算を併用した変換データベースの構築プログラム、(iii)遺伝アルゴリズムによる3D粒子モデルの組み合わせ最適化プログラムを統合したプロトタイプのプログラムを改良・進化させ、一連の処理を自動で行う3D実態予測プログラムを開発する。 ②については、粒径分布の異なるガラスビーズ及び珪砂のサンプルを作成してX線CT解析を行う。X線CT撮像データの解析により、3D情報とランダム断面の2D情報を計算し、2D情報から本手法を用いて3D情報を推定して、実際に計測された3D情報と比較する、という実験により開発手法の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入額が当初の見積りより少額となった。不必要な予算消化を避けた結果、若干の次年度使用額が発生した。
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