微細印刷エレクトロニクスにおけるパターン形成技術として反転オフセット印刷技術を対象にして、昨年度、シリコーンゴム(PDMS)のXY方向歪みに起因する寸法忠実性の悪化およびZ方向歪みを利用したコンタクトビア形成技術の確立に成功した。その中で、PDMSと刷版の界面における接触不安定性が原因となって、高速印刷における欠陥形成が生じることが示唆された。これは接触不安定性に由来して空気を抱き込み(泡噛み)が起こり、当該部分のパターンが欠損するものであることがわかった。泡噛みのサイズおよび発生頻度は、PDMSの厚みと硬さ、PDMS表面のナノスケールの凹凸、印刷速度に大きく依存しており、その傾向は印刷欠陥と対応するものであった。直接観察からPDMSの自発濡れ速度を推定したところ、欠陥の発生傾向と対応することも明らかになった。また、印刷時にかかる圧力を大きくすると抱き込まれた空気を迅速にPDMSに吸収させることができることがわかった。そのため、転写速度がおおよそ100mm/s以上の高速反転オフセット印刷を行う場合は、転写圧力を増大させることが有効な解決手段であることが明らかになった。また新たな試みとして、ナノ粒子以外のインク開発にも取り組んだ。アセチルアセトネート錯体を酸化物前駆体として、水素プラズマ還元技術を組み合わせる事により、酸化モリブデンおよびジルコニア薄膜の反転オフセット印刷が実現できることが明らかになり、全印刷酸化物薄膜トランジスタの印刷形成にも成功した。その他、インジウムや亜鉛錯体など9種類の金属種に対しても適用可能なインクの共通組成も明らかになり、前駆体材料のインク化設計指針を示すことができた。
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