研究課題/領域番号 |
17K18412
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山路 俊樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30432355)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超高密度磁気記録 / マイクロ波アシスト磁化反転 / スピン波 / 臨界膜厚 / 理論計算 |
研究実績の概要 |
本研究ではスピン波アシスト磁化反転の理論を構築し、5 Tbit/in2を超える次世代超高密度磁気記録を実現する磁化反転制御手法の確立を目指す。また、スピン波共鳴と磁化反転の相関を精査し、スピン波アシスト磁化反転の低消費電力化、および高精度(低エラー率)化の指針を得ることを目指す。 本年度では、一次元有効スピンモデルを作成し、従来のマイクロ波アシスト磁化反転からスピン波アシスト磁化反転に 転移するために必要な臨界膜厚を明らかにすることを試みた。LLG(Landau-Lifshitz-Gilbert)方程式に基づく数値計算の結果、磁化反転ダイナミクスが均一モードから、スピン波励起を伴う磁化反転モード(不均一モード)に変わる臨界膜厚が存在することが分かった。さらに膜厚を増加させると、マイクロ波アシスト磁化反転において最小の反転磁場を与える臨界周波数が増加し始める臨界膜厚が存在することが分かった。このように、2種類の臨界膜厚が存在することを明らかにした。 2種類の臨界膜厚の交流磁場強度依存性を検証した結果、交流磁場強度を増加させることにより、臨界周波数を増加させるのに必要な臨界膜厚を減少させることができることが分かった。また、交換スティフネス定数を減少させると、2種類の臨界膜厚とも減少することが分かり、臨界膜厚の大きさは交換スティフネス定数(言い換えると、交換長)が決めていることが分かった。さらに、ダンピング定数を大きくすると、スピン波の強度が大幅に減少するため、膜厚を増加させても臨界周波数に変化は見られなかった。スピン波を利用したスピントロニクス(マグノ二クス)と同様に、本研究の主題であるスピン波アシスト磁化反転の実現のためにも小さいダンピング定数が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標としていた一次元有効スピンモデルの作成、作成したモデルによる臨界膜厚の発見、および臨界膜厚の物質パラメータ依存性を明らかにすることができた。得られた結果を国内学会での発表1件、国際会議での発表2件を行なった。さらに、学術論文がアメリカ物理学会のApplied Physics Lettersに掲載が決定され(4ページ)、近く掲載される。以上をまとめて本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は一次元有効スピンモデルを用いた単層のスピン波アシスト磁化反転の理論を構築し、学会での発表、学術論文としてまとめることができた。次年度以降は、磁気異方性が小さいソフト層と大きいハード層を結合させた交換結合媒体への応用、温度の効果の検証を進める必要がある。また、土台として交換結合媒体でのマイクロ波アシスト磁化反転の理論解析の構築も行う必要があると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソフトウェアライセンスに関して、有効期限内に更新することによりプレミアサービスによる割引価格が適用されたこと等により、18882円の次年度使用額が生じた。次年度は、国内および国際学会のための旅費および各種ソフトウェアライセンス費用、また論文投稿費などに充てる予定である。
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