本研究では5 Tbit/in2を超える次世代超高密度磁気記録を実現する磁化反転制御手法の確立を目指す。また、スピン波共鳴と磁化反転の相関を精査し、スピン波アシスト磁化反転の低消費電力化、および高精度(低エラー率)化の指針を得ることを目指す。 これまで、一次元有効スピンモデルを作成し、従来のマイクロ波アシスト磁化反転からスピン波アシスト磁化反転に転移するために必要な臨界膜厚を明らかにした。LLG(Landau-Lifshitz-Gilbert)方程式に基づく数値計算の結果、磁化反転ダイナミクスが均一モードから、スピン波励起を伴う磁化反転モード(不均一モード)に変わる臨界膜厚が存在することが分かった。さらに膜厚を増加させると、マイクロ波アシスト磁化反転において最小の反転磁場を与える臨界周波数が増加 し始める臨界膜厚が存在することが分かった。このように、2種類の臨界膜厚が存在することを明らかにした。 次に、次世代超高密度磁気記録を実現する磁化反転制御手法の確立に向けて、低消費電力化の手法として電圧を印可して異方性を制御する、電圧制御磁化反転のダイナミクスの計算プログラムの作成を試みた。さらに、高精度(低エラー率)化の方針を得ることを目指し、LLG方程式に熱によるランダム揺動磁場を導入したstochastic LLG方程式(ランジュバン方程式)に基づく数値計算プログラムの作成を試みた。電圧制御磁化反転の高精度化には、小さいダンピング定数が必要であることが分かってきたが、ダンピング定数が小さければ小さいほど良いというわけではない。すなわち、ダンピング定数を小さくすると、書き込みエラー率が低く抑えられているパルス時間の幅が狭くなることが分かった。そこで、書き込みエラー率の減少と、書き込みエラー率減少に有効なパルス時間の幅とのバランスを調べて、最適なダンピング定数の精査を行なった。
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