研究課題/領域番号 |
17K18413
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
坂田 義太朗 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70636406)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光散乱 / 熱応力 / ガラス基板 / 応力誘起光散乱法 |
研究実績の概要 |
潜傷とは製品製造における研磨工程等で発生するマイクロ・サブマイクロスケールの微小なクラックである。提案者は、薄型基板(ガラス基板やSi半導体ウェハ)などにおいて、曲げ応力と光散乱計測とを組み合わせた新規な潜傷検査技術「応力誘起光散乱法」を開発し、その検出に成功してきた。しかしながら、実際の製造現場で求められるところは、潜傷発生に関するメカニズムの解明や潜傷検出のメカニズムの解明である。そこで、本研究課題では、メカニズム解明の基礎的検討として、微小観察下での温度負荷による潜傷先端および潜傷近傍の光散乱強度変化を実験的に評価・解明を行うことを目的とし、研究を進めている。 【微小領域観察型応力誘起光散乱計測システムの構築】 微小領域下での観察を実現するため、新たな技術を導入したシステムを構築することに成功した。従来使用してきた応力誘起光散乱法では曲げ応力を利用してきたことから、微小観察を行う際に機械的変形により潜傷が被写界深度から大きく離れてしまう問題を有していた。しかしながら、温度負荷を利用した新たな応力誘起光散乱法を開発・導入することによりこの問題を解決することに成功し、微小領域を観察可能な顕微鏡システムの構築に成功した。構築した本システムは300×300μm角の微小領域が観察可能であることも確認した。また、微視的に観察することで、潜傷自身において光散乱の発生する領域が異なることや、温度負荷により潜傷先端およびその近傍の光散乱強度変化が発生する領域も異なることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標としていた顕微鏡タイプの微小領域観察型応力誘起光散乱計測システムを構築することに成功した。潜傷の光散乱を微視的に観察することで、潜傷近傍において光散乱が発生する領域が異なることも見出し、温度負荷によって潜傷に生じる光散乱も変化することも観察することに成功した点は、順調に進んでいる。 一方で、より詳細に潜傷の光散乱を観察するためには顕微鏡システムの対物レンズを高倍率化し、より詳細に観察する必要があることも見出された。
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡タイプの微小領域観察型応力誘起光散乱計測システムによる潜傷の光散乱観察の高倍率化を実施するとともに、より詳細なシステムへと発展させる予定である。また、本システムにより、潜傷の大きさと光散乱強度変化との関係を評価するとともに、数値計算による応力分布の算出結果も合わせて相関関係について考察することを行う予定である。さらに、本手法のみならず、別の検査装置との計測結果とも比較検討することも行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、海外にて行われる国際会議への参加を予定していたが、より高倍率下での観察などの必要性が出てきたことから、旅費を使用しなかったため次年度使用額が生じ、より高倍率の対物レンズの購入に充てることとした。また、当初予定していた物品が安価に導入できたことから、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画としては、高倍率な対物レンズの購入費および消耗品、旅費として使用する予定である。
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