本研究の目的は,南関東に分布する新生代の地層に記録された大規模な海底地すべりと,海盆の発達過程の関係を理解することにある.具体的には,1)海底地すべり堆積物の厚さや側方分布及び岩体の起源から,それを形成した海底地すべりの規模と形成過程を推定する.また2)地表及び地下の年代層序を精度良く明らかにして,堆積速度の急激な上昇や不整合などを形成した構造運動と海底地すべりの前後関係を明らかにする.これにより,これまで十分に明らかにされてこなかった海底地すべりと海盆発達の関係を地質学的証拠に基づいて理解でき,活動的な前弧域における海底斜面の長期的な安定性評価につながる. 昨年度までに房総半島における海底地すべり堆積物の分布と起源,形成様式が明らかになり,複数の論文として出版された.本年度の計画は,不整合や海底地すべりの研究上重要な多数のテフラ層や大深度ボーリングコア試料の微化石・テフラ試料の分析結果のまとめと,堆積盆発達史との関係を考察することであった.成果として更新統黄和田層のテフラに関する論文と千葉市の地下2000 mから新たに発見されたガラス質火山灰層についての論文をそれぞれとりまとめることが出来た.また堆積盆の長期的な構造運動と海底地すべりや不整合の関係を説明する論文を現在準備中である.このほか海底地すべりや微化石に関する国際学会で発表を行なった.本年度の補助金は主に上記の研究を遂行するためのテフラ分析と学会参加のための渡航費等に充当された.
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