研究課題/領域番号 |
17K18418
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三村 憲一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20709555)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノクリスタル / 水熱合成 / チタン酸バリウム / 固溶体 / 圧電体材料 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続きチタン酸バリウムナノキューブへのカルシウム固溶体の合成方法の検討および最適化を行った。これまでの結果からCaが塩基条件下において水酸化物を生成し、反応が進みにくいことが確認された。そこで本年度は、合成温度に着目し最適化を行った。チタン酸バリウムナノキューブの合成条件と比較して20℃高温における条件下において、Caが固溶したチタン酸バリウムナノキューブの生成を走査電子顕微鏡による微構造観察測定およびX線回折測定の回折線のシフトから確認した。さらに、透過電子顕微鏡による微構造観察ならびにエネルギー分散型X線分析から、キューブ状粒子ではコアシェル型の形状を示し、シェル層のみにおいてCaの固溶が見られ、コア部とシェル層で大きく組成が異なる特徴的な単結晶粒子であることが新たに確認された。また、同時に存在する15-20 nmのサイズの不定形微粒子にはCaが固溶されていないことも確認できた。特にコアシェル型のナノキューブが合成可能になったことについては新しい発見であり、本粒子一つをコンポジット粒子とみることができ、異種界面接合を利用した特異物性の発現に大いに期待が持てる材料であると考えられる。これらのことから、水熱合成によるCa固溶化は実現可能かつ特徴的なナノ材料合成が可能になった。ただし、粒子サイズが50-80 nmとチタン酸バリウムナノキューブの15-20 nmと比較して大きいこと、回折線のシフトから算出した格子定数および検出される不純物から、仕込み組成である30 mol%のCaが固溶しきれていないことが確認され、今後さらに反応時間、Ca添加量等、反応条件の最適化を図るとともに、最終目的であるコンポジット集積膜の形成とともに特徴的なコアシェルナノキューブの圧電特性評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水熱合成によりチタン酸バリウムナノキューブにCaが固溶可能になったことは大きな前進であると考えられる。また、当初は予想していなかったコアシェル型のナノキューブが合成可能になったことについても新しい発見であり、キューブ単独においてコンポジット構造を形成しているため、特異物性の発現に大いに期待が持てる材料であると考えられる。 一方で、固溶量の最適化、キューブサイズの制御、コアシェル型のナノキューブの合成メカニズムの解明などの課題もあるため、今後反応条件を詳細に最適化するとともに、ジルコニウムの同時固溶や、最終目的であるコンポジット集積膜の形成および圧電応答プローブ顕微鏡による圧電特性評価を進める。
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今後の研究の推進方策 |
微粒子とキューブ粒子が同時に得られるため、可能な限りキューブ粒子の収率を上げるための濃度や温度等の合成条件の最適化を進める。また、キューブ粒子のみを分級する条件についても検討を進める。得られたコアシェル型ナノキューブ粒子において、詳細な構造解析を行うとともに、反応メカニズムの解明、誘電・圧電特性の評価を進め、コンポジット型のキューブ集積体の特性解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成条件の最適化に注力したため、所内分析等を次年度以降に繰り越した。得られたキューブの組成分析等を今後詳細に行う予定である。
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