前年度に得られたBaTiO3/CaTiO3のコアシェル型のナノキューブ材料について、合成条件の最適化と詳細な微構造観察、圧電特性の評価を行った。合成条件について、230℃の合成温度においてコアシェル構造が見られ始め、240-250℃で形状およびサイズの揃ったコアシェル型のナノキューブを安定的に得ることが可能であることが確認され、CaとBaの反応速度の差によりこのような構造が得られることが示唆された。また、有機添加剤及び界面活性剤の両者がコアシェル型ナノキューブを形成するために必須であることも確認された。エネルギー分散型X線分析(EDX)による組成分析では、BaとTiのスペクトルが重なってしまうことから、元素の分布が正確に把握できないため、電子エネルギー損失分光法(EELS)により元素分析を行ったところ、シェル部にはBaが存在しておらず、CaTiO3単相であることが明らかとなった。したがって、ヘテロエピタキシャル界面を有するコンポジット型ナノキューブであることが確認され、本研究の目的であるヘテロエピタキシャル界面の導入が可能であることを明らかにした。 また、基板上にコアシェル型ナノキューブを堆積させた粒子膜において、圧電応答顕微鏡を用いて圧電特性の評価を行ったところ、高温による焼成を行っていないにもかかわらずBaTiO3ナノキューブ850℃集積膜と比較して3倍程度の大きな圧電応答を確認することができ、ヘテロエピタキシャル界面が圧電特性に影響を与えたことが示唆された。しかしながら、この特徴的なコアシェル型コンポジットナノキューブは、これまでのナノキューブと比較すると非極性有機溶媒への分散性が低いことが明らかとなり、本材料の規則配列集積化が困難であることが分かった。したがって、規則配列集積化によるヘテロエピタキシャル界面の導入量の制御等が新たな課題として抽出された。
|