本研究では、X線自由電子レーザー(XFEL: X-ray Free Electron Laser)のパルスエネルギーの絶対測定のため、熱流束測定に基づいた超高速応答のパルス放射計を開発を進めている。今年度はパルス放射計の実証実験を中心に研究を進めた。実証実験は、国内唯一のXFEL施設である理化学研究所にあるSACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free-electron LAser)の軟X線FELのビームラインBL1で行った。実験に使用した光子エネルギーは約100eV、パルスエネルギーは26μJ/pulse、XFELパルスの繰り返し周波数は60Hzであった。パルス放射計の測定結果の絶対値の妥当性は、ビーライン常設のオンライン強度モニター(校正済)の測定値との比較によって検証した。パルス放射計と強度モニターで同時にXFELパルスのパルスエネルギーの測定し、両者の測定値を比較した。その結果、パルス放射計からはXFELパルスに起因した約30mV程度の出力信号が計測され、XFELパルスの検出の実証は成功した。しかし、時間分解能が200ミリ秒程度と、60Hzの繰り返しのパルスを分解するには不十分であった。この時間分解能の低下の原因は、受光部がXFELパルスを吸収した後に熱平衡状態に戻るまでの時間が長いことが考えられる。そこで、今後、ペルチェ素子による排熱機構の強化を図り、時間分解能の向上を目指す。また、パルス放射計の海外施設での利用を目指しているため、ドイツのXFEL施設であるEuropean XFELと共同で、放射計によるXFELの平均レーザーパワーの絶対測定を行い、予備データの取得を行った。 以上のように、熱流束測定によるXFELパルスの検出の実証には成功した。今後、時間分解能を向上させることにより、本測定機の実用化を目指す。
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