研究課題/領域番号 |
17K18423
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加藤 悠人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (70635820)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 誘電体導波路 / 誘電体アンテナ / Sパラメータ / 高周波計測 |
研究実績の概要 |
同軸線路の伝送損失が顕著になるミリ波・サブミリ波帯では、それに代わるフレキシブルな伝送線路として誘電体導波路が注目されている。誘電体導波路は同軸線路よりも伝送損失が低く、金属導波路とは異なりフレキシブルである一方で、アンテナ等に接続する際には金属系の同軸・導波線路に変換する必要があり、変換部における不整合による反射や金属の導体損が課題となっていた。また、変換部では誘電体と金属という異種線路を接続するにあたり、誘電体導波路が動いた際に接続部にかかる力学的負荷やそれによる位置ずれが問題となる。 本研究では誘電体アンテナと誘電体導波路を一体成型し、線路の入力ポートからアンテナ放射部まですべて同一材料で、不整合の一切ない構造を実現することでこれらの課題を解決することを目指す。アンテナ部と誘電体線路部では一般に伝送モードやインピーダンスが異なるため、そのモード変換には従来とは異なる設計が必要になる。そこで、その新規設計手法と実現した構造の精密計測手法について研究開発を行う。 平成29年度は、誘電体導波構造の精密計測手法を提案した。具体的には、金属線路の精密計測技術として確立しているTRL校正法を誘電体導波線路の計測に拡張するために、被評価線路と同材料、同構造からなるTRL校正キットを開発し、それによる計測機器の校正結果をもとに、誘電体導波線路の計測結果の高精度化を図った。開発技術の検証として、28GHz帯で動作する低損失誘電体導波線路を設計・試作し、それに対する計測を開発技術により実施した。その結果、28GHz帯における伝送損失が1.0dB/m以下であることを実証するとともに、このような低損失誘電体導波線路を評価するためには、開発技術の活用が必須となることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は誘電体導波線路の伝送損失を高精度に計測するための技術開発を行った。開発技術は、本研究で提案するアンテナ一体型誘電体線路の計測にも利用可能であり、平成30年度に実施するアンテナ一体型誘電体線路の動作検証の結果に妥当性を与えるためには必須となる検討事項である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に開発した計測技術について、その高度化を進めるとともに、学会等において積極的に外部発表を行う。アンテナ一体型誘電体線路を設計・試作し、動作検証を行うとともに、その用途開発として、低侵襲近傍界電磁界プローブとしての可能性を探る。近傍界電磁界分布を探索する対象としては金属周期構造(メタマテリアル)を検討しており、その準備は平成29年度から一部着手している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度成果の国際学会発表のための旅費や学会参加費に使用する計画である。また、開発品の電磁界プローブとしての用途検証のための実験装置の購入に充てる計画である。
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