同軸線路の伝送損失が顕著になるミリ波・サブミリ波帯では、それに代わるフレキシブルな伝送線路として誘電体導波路が注目されている。誘電体導波路は同軸線路よりも伝送損失が低く、金属導波路とは異なりフレキシブルである一方で、金属線路との接合部におけるミスマッチの問題から産業応用が進んでいなかった。本研究では、誘電体導波路の産業応用の拡大を目指し、誘電体導波路と誘電体アンテナを一体化したこれまでにない構成の考案・実証と、誘電体導波路の性能実証のために必要となる高精度な計測技術の確立を行った。 誘電体導波構造の伝搬計測の高精度化のために、本研究では、被評価線路と同材料、同構造からなるTRL校正キットを開発し、金属線路の精密計測技術として確立しているTRL校正法を誘電体導波線路の計測に拡張した。平成30年度は、提案手法の実用的な有用性を検証するために、提案手法における代表的な誤差要因として、校正キットの寸法ばらつきとSパラメータ測定の測定再現性の影響に着目し、それぞれを定量的に評価した。その結果として、これらの要因が誘電体導波管の伝送係数の位相と振幅の測定の不確かさにそれぞれ大きく影響することを確認した。電磁界シミュレーションと実験から、これらの要因によって評価された誘電体導波路の伝搬特性計測の不確かさは、28GHz帯のPTFE製の円形誘電体導波路(100mm長)に対して、それぞれ0.20ラジアンと0.5 dB未満であることが確認された。本研究成果は国際学会CPEM2018で発表するとともに、IEEE TIM誌(IF: 2.794)に掲載された。
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